アクセスではなく「純度」で考える|無関係ツールのバズは、資産になるか
SNSのタイムラインを見ていると、自社の事業領域とは関係ないツールを開発して、それがバズっている個人や企業をしばしば目にします。話題になり、引用され、サイテーション(ブランド言及)が集まっていく。一見、サイト全体にとってもプラスのように見えます。
ただ、ここで疑問が浮かびます。事業と関係の薄いツールで集めたサイテーションは、サイト全体の評価にとって本当に意味があるのでしょうか?
SEO時代の感覚で言えば、被リンクとブランド言及が増える時点で価値があります。AIO時代でも、ブランド言及がAI引用に強く効くという調査があります。Ahrefsが75,000ブランドを対象に行った研究では、ブランド言及とAI Overview掲載の相関係数は0.664、対する被リンク数との相関は0.218で、3倍以上の差が出ました。
ただ、ここには重要な留保があると考えています。「言及されること」自体に価値があるのではなく、「どの領域で言及されているか」が効くのではないか、というのが本記事の問いです。
本記事ではツールを起点に書いていますが、同じ論理は無関係な雑記記事や読まれ目的のまとめコンテンツなど、コンテンツ全般に当てはまると考えています。AIO・GEO対策(AI検索最適化)に関する他の記事と合わせてご覧いただくと、論点がつながりやすいかもしれません。
結論を先に書くと、
- アクセスがほとんどない記事でも、本業に関係していればサイト全体を押し上げます
- 逆にアクセスが多くても、本業と関係ない記事はサイトの専門性を下げる可能性があります
- サイテーションも同様で、本業領域でのサイテーションでなければAIO上の本業評価には積み上がりにくいと考えられます
これらの主張を、ここ数年のSEO関連の調査データから見ていきます。
無関係な記事はサイトを下げる
最も分かりやすい実例は、2024年5月から始まったGoogleのSite Reputation Abuse policyの執行です。
これは、本来そのサイトのテーマと関係のないコンテンツを本体ドメイン下に置いて、本体の評価を借りる形で順位を取る手法を制限する仕組みです。執行後の被害規模(Sistrix集計、2024年末時点)はかなり大きなものでした。
- Time傘下の Time Stamped:検索可視性 −97.5%
- Wall Street Journalの Buy Side:−77.3%
- CNN Underscored:−63%
- Forbes Advisor:−43%
これらはあくまで第三者運営のサブセクションの数字で、CNN.comやWSJ.comなど本体ドメインは影響を受けていません。同じドメインの中でも、本業から逸脱したコンテンツの塊だけが−97%級の打撃を受けた、ということです。
ここで重要なのは、Googleが「サブセクションを独立サイトとして扱う」処理を実装したという事実です。Google公式ブログでも「サイトの主要部分から大きく異なる(starkly different)領域は、独立したサイトとして扱う」と明示されています(2024年11月)。
さらに、2024年5月に流出したGoogle Content Warehouse APIの内部文書では、サイトのトピック純度を測ると見られる siteFocusScore、メインから逸脱しているページの距離を測る siteRadius といった内部スコアの存在が確認されました。Google公式は「文書は文脈を欠く」とコメントしましたが、内部仕様としてサイト純度を測る設計が存在すること自体は否定されていません。
ここまでの事例は大手メディアのものですが、サイト純度を測る仕組み自体は、ドメインの規模に関わらず作用していると考えられます。Site Reputation Abuse policy は本来サードパーティ運営のサブセクションを対象にしていますが、その背景にある siteFocusScore や「starkly different な領域は独立扱い」という処理は、評価アルゴリズムの一部として常に動いていると見られます。中小規模サイトでも、本業から離れたコンテンツの塊は、サイト全体の評価を下げる方向に働く可能性があります。
サイテーションも同じ構造で評価される
冒頭の問いに戻ります。「事業と関係の薄いツールで集めたサイテーションは意味があるのか」。
ここまでの議論を踏まえると、少なくとも現時点の観測では、本業領域から離れたサイテーションは、AIO上の本業評価には積み上がりにくいように見えます。
Googleがトピック単位でサイトを分離して評価していることを踏まえると、サイテーション側でも同様の文脈解釈が行われている可能性が高いと考えられます。現時点の観測では、LLMがサイトを評価するとき、単純なサイテーション総量ではなく、「このブランドはどの領域で言及されているか」を見ていると推測されます。Web制作会社が無関係なツールでバズって、ツール関連のサイテーションを大量に集めても、現時点ではWeb制作領域でのAI引用候補としての評価には積み上がりにくい構造になっているように見えます。
つまり、本業から離れたコンテンツの塊はサイト全体の評価を下げる方向に働く一方、本業から離れた領域で集めたサイテーションも、本業の評価にはあまり積み上がりにくいように見えます。バズらせるために無関係なツールを大量に置く、無関係な雑記記事を量産する——これらは短期的に流入や言及を生んでも、中長期的にはサイト純度を高める方向には作用しないと考えられます。
これが、冒頭で挙げた問いに対する現時点での私の見立てです。なお、自社がAIにどう認識されているかを実際に確認したい場合は、関連記事のAIに会社名は出てくる?10分で測るAI認知度診断もあわせてご覧いただけると、本記事の論旨が実務的にどう活きるかがイメージしやすいと思います。
アクセスのない記事もサイトを支える
ここまでは「無関係なコンテンツがサイトを下げる」という方向の話でした。本記事のもう一つの主張は、その逆、「アクセスがなくても本業に関係していればサイトを支える」という方向です。
最大規模の実証はZyppy(Cyrus Shepard)による23,000,000本の内部リンク研究です。1,800サイト・約520,000ページをGoogle Search Consoleと突合した結果、内部からのインバウンドリンク数0〜4本のページが平均2クリック/月だったのに対し、40本以上のページは約8クリック/月と、4倍の差が観察されました。
これは、内部リンクハブとして機能する記事は、それ自体のPVが少なくても、本業の主要ページへリンク評価を渡すことで全体の順位を押し上げることを示しています。
ここで補足が必要です。「PVが少ない記事=資産」と単純化すると誤解を生みます。PVが少なく、かつ内部リンクのハブとしても機能していない記事は、ただの放置コンテンツであり、資産にはなりません。重要なのは、本業領域内の記事を意図的に内部リンクで繋ぎ、ハブとして機能する状態を設計することです。書いて放置するのではなく、本業のピラー記事から参照される構造を能動的に作る、という運用が前提になります。
さらに、コンテンツプルーニング(古い・無関係な記事を整理する施策)の事例も豊富です。新規追加なしで、削除だけでサイト全体のトラフィックが上がった事例が複数確認されています。
- QuickBooks:2,000記事を削除 → 税務シーズンのトラフィック +44%、サインアップ +72%
- Home Science Tools:200記事を削除(全体の10%) → 戦略的コンテンツ収益 +64%
- CNET:数十万ページ削除 → 検索トラフィック +29%
これらの事例で削除対象になったのは、単にPVが低い記事ではありません。Inflowが整理した判定基準は「オーガニック流入が低い + コンバージョン寄与なし + 外部被リンクなし + 内部リンクなし」のすべてを満たすページで、いずれか一つでも価値が残っていれば残置すべし、というルールです。
つまり、本業領域内の記事であって、かつ内部リンクハブとして機能していたり、CVに寄与していたり、外部から参照されていれば、PVがゼロでも資産です。逆に、PVだけ高くて他がゼロの記事、あるいはそもそも本業領域から外れた記事は、サイト全体の純度を下げる方向に働く可能性があります。
PVと純度の関係を整理する
ここまでの議論を、PVと本業との関係性で整理すると、次のように分類できます。
| PV高 | PV低 | |
|---|---|---|
| 本業領域内 | ◎ 理想形(専門性とCVが両立) | ◯ 内部リンクハブとして機能すれば資産 |
| 本業領域外 | ✕ 最悪(CVなし・専門性を下げる) | △ ただの放置コンテンツ |
SEO時代は「PVが多い=良い記事」と単純に評価されがちでした。AIO時代では、PVだけでは判断できません。むしろ、PVが多くても本業領域外の記事は、サイト全体の専門性を下げる方向に働く可能性があります。
ただしRedditはなぜ伸びたのか
「Redditは雑多なコンテンツの集合体なのに、検索可視性が伸び続けている。サイトの純度なんて関係ないのでは」と思う方もいるはずです。
Redditの検索可視性は2023年7月から2024年4月の18ヶ月で +1,328% 増加しました(Sistrix Visibility Index)。ただしこれはGoogleが「Hidden Gems Update」でフォーラム系コンテンツを優先表示する仕様変更を行った結果(2023年秋、Google Senior Director, Searchの Brad Kellett が公式確認)であり、サイトの純度ロジックを否定するものではなく、特定の種類のコンテンツを意図的に持ち上げた特殊事例だと考えられます。
純度の高い積み上げ、という考え方
ここまでのデータは、ひとつの考え方に集約できると思います。
サイトは「純度の高い積み上げ」で設計する。
ここで言う「純度の高い積み上げ」とは、本業領域に主題が一貫したコンテンツが、内部リンクで相互に支え合いながら、継続的に蓄積されている状態を指します。単にコンテンツの本数を増やすことではなく、サイト全体の主題が外から見て一意に定まる状態を、本業領域内のコンテンツで作り上げていく、という考え方です。
短期的なバズには、確かに強さがあります。ただ、それは「一発の強さ」であって、「積み上げ」にはなりません。一方、本業に関係したコンテンツは、それぞれのPVが小さくても、サイト全体の主題を強化し、内部リンクで支え合い、引用候補としても積み上がっていきます。
評価軸を「PV」から「純度」に切り替えると、コンテンツの判断基準も変わります。「どれだけ読まれるか」ではなく、「本業のトピカルな評価に積み上がるか」で判断する、という考え方です。
この軸で見ると、「自社と関係ないバズツール」や「読まれるけれど本業から外れた雑記記事」は、たとえ短期的にPVを生んでも、サイトの資産にはなりにくいと考えられます。むしろ、ドメインの主題をぼやけさせる方向に働く可能性があります。
ただし、サイトのコンテンツすべてをSEO/AIOの評価軸で判断する必要はないことにも触れておきます。たとえば、社員が日替わりで日報的な記事を書く、いわゆる「社員ブログ」的な発信は、SEO/AIOの観点では純度を若干下げる方向に働く可能性があります。ただし、これは多くの場合、採用ブランディングや社員のアウトプット文化、経営者の個人発信といった別の目的のコンテンツで、その評価軸で見ればプラスとして機能しているケースが多いと考えられます。重要なのは、コンテンツごとに「これは何の評価軸で評価されるべきか」を意識的に切り分けることだと思います。SEO/AIOが目的なら純度を保つ。それ以外の目的があるなら、その目的での評価軸で判断する。混ぜて評価しないことが、判断を曖昧にしないコツです。
ENVY DESIGNでは、事業と直接関係ない、関係性の薄いコンテンツやツールをサイトに多く載せることは、専門性の観点からあまりおすすめしていません。一発の強さはあっても、積み上げにはならないからです。
よくある質問(FAQ)
Q. アクセスの少ない記事は削除すべきですか?
一概には言えません。PVが少なくても本業領域に関連した記事であれば、内部リンクのハブとしてサイト全体を支える役割を果たすことがあります。判断基準はアクセス数ではなく本業領域との関連性です。本業と無関係でアクセスもない記事は整理を検討する余地がありますが、関連性のある記事は残す価値があると考えられます。
Q. 事業と関係ないバズ記事はサイトに有効ですか?
AIO時代では慎重に考える必要があります。本業と無関係なコンテンツで集めたサイテーションやアクセスは、サイト全体の主題を曖昧にし、専門性の評価を下げる可能性があります。Ahrefsの研究ではブランド言及がAI引用に強く相関するとされますが、その言及が本業領域と結びついていることが重要だと考えられます。
Q. サイトの「純度」とは何を指しますか?
この記事で言う純度とは、サイト全体の主題が本業領域に一貫して集約されている度合いを指します。本業に関連したコンテンツが内部リンクで相互に支え合いながら継続的に蓄積されている状態が「純度の高い積み上げ」です。単なる記事数の増加ではなく、主題の一貫性が外から見て明確であることが重要だと考えられます。
Q. RedditのようなサイトはなぜAI時代に伸びているのですか?
Redditの検索可視性は2023〜2024年に大きく伸びましたが、これはGoogleがコミュニティ由来のコンテンツを特別に評価する動きや、データ提携などの個別要因が関与していると考えられます。雑多なコンテンツの集合でも伸びているように見えますが、一般的な中小サイトにそのまま当てはめられるモデルではない点に注意が必要です。
AI検索に引用されるサイト設計の全体像は、AIO・GEO対策サービスでご紹介しています。
補足:ENVY DESIGNのサイテーションチェッカーについて
最後に、本記事の論旨をENVY DESIGN自身に当てはめると、最近公開したサイテーションチェッカーがその例にあたります。
ENVY DESIGNの本業はWeb制作とAIO支援です。「サイトがChatGPTなどのAIに引用されているかを確認するツール」は、本業のど真ん中に位置しています。バズや大量のアクセスを目的にしたものではなく、本業領域に直接乗ったツールとして、サイト全体の専門性を押し上げる役割を担う設計です。
利用者層は本業のターゲットと重なり、ツール周辺で生まれる利用や言及は、そのままAIO領域でのトピカルな評価に積み上がる構造になっています。本記事も、こうしたツール運用の中で観測している挙動が背景にあります。
SEO・AIO戦略のご相談
ENVY DESIGNは創業14年・法人11期目、500件以上のWeb制作実績をもとに、SEOとAIO(AI検索最適化)の両面からサイト設計をご支援しています。「自社サイトの純度をどう高めればよいか」「無関係に膨らんだコンテンツをどう整理するか」といったご相談についても、現状サイトを拝見したうえでお答えしています。
ご興味ある方は、サービス一覧またはお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
出典
- Schema.org(構造化データの公式仕様)
- Google Search Central(検索・構造化データの公式情報)
- Web Vitals(Core Web Vitalsの公式定義)
- Google検索公式ブログ(AI Overview等の発表情報)