ピーク月30件、リニューアル後3〜4件。完璧主義で過去記事の大半を削除した話
ENVY DESIGN のサイト運営の中で、もっとも痛い判断ミスをひとつ紹介させてください。2022年のサイトリニューアル時に、それまで蓄積してきた80〜90記事のブログをほとんど削除し、URLも基本的に全リセットしました。厳密には5記事ほどは別URLに移して残しましたが、体感としてはほぼ全削除に近い判断でした。結果、ピーク時は月30件あった問い合わせが、リニューアル後は月3〜4件まで落ち、数年経った今でも完全には戻っていません。
理由はシンプルで、完璧主義でした。「品質がイマイチな記事を残すのは気が引ける」と判断したのです。SEO的なマイナスは織り込み済みでの判断でしたが、想定がはるかに甘かったというのが本記事の核です。今振り返ると、これは Web 制作会社として最大級の判断ミスでした。
本記事は、そのときに失ったもの、なぜそう判断してしまったのか、現在の状態を、当事者として正直に書き残します。同じような判断をしようとしている方の参考になればと思います。
結論を先に書きます
- 2022年のリニューアル時に過去記事の大半を削除し、URLも基本的に全リセットしました
- ピーク時は月30件あった問い合わせが、リニューアル後は月3〜4件に落ちました
- 主要キーワードで5位以内に入っていた状態から、検索順位は大きく後退しました
- 数年経った今も、完全には戻り切っていません
- 当時の判断軸(「品質」)が間違っていたわけではなく、SEOマイナスの想定が甘く、過去記事の価値の大きさを見誤っていたのだと考えています
2017年頃、月30件の問い合わせがありました
2017年前後のENVY DESIGNサイトは、今振り返るとSEOがよく効いていた時期でした。
- ピーク時で月30件前後の問い合わせ
- 「ホームページ制作 東京」などの主要キーワードで、調子が良いときは5位以内
- 順位が落ちる時期でも、常に2ページ以内には収まっていた
- ブログを継続的に書いていて、検索エンジンからの流入が安定していた
当時はGoogleの検索評価軸も今ほど複雑ではなく、「継続的にコンテンツを書いているサイト」が素直に評価されていた印象です。何かを書けば書いただけ、サイト全体の評価が上がっていく感覚がありました。
一番尖っていた記事:40日連続ブログ実験
数ある記事の中で、自分でも気に入っていたのが「SEO記事を40日連続で書き続けたらアクセスは増えるのか」という実験記事でした。
毎日1本ずつ、40日間連続でブログを書いて、アクセスがどう変動するかを観測する、というシンプルな企画です。今読み返したいのですが、もう手元にもサイトにも残っていません。自分で削除してしまったからです。
実験そのものは、当時としては珍しい試みでした。「やってみて結果を書く」という、いま振り返ると一次情報として価値のあった内容です。Web制作会社が自社の運営データを公開している例は、当時も今もあまり多くありません(この姿勢の背景はコンテンツは外注できても、思想までは外注できないでも書きました)。
それを、自分の手で消しました。
リニューアル前は、すでに更新が止まっていました
ここは正直に書いておきます。2017年のピークを過ぎてからの数年間、ENVY DESIGNのブログ更新は徐々に止まっていきました。
クライアントワークが忙しく、自社サイトのコンテンツを書く時間がほとんど取れなかったのです。リピーターのお客様が多い構造上、新規問い合わせが多少減っても事業は回ります。その結果、自社サイトへの優先度がどんどん下がっていきました。
リニューアル直前の2021〜2022年初頭の時点で、すでに月の問い合わせ数は7〜8件程度に落ちていました。ピーク時の30件から見ると4分の1ですが、それでも事業としては成立していたので、当時はそれほど深刻に捉えていませんでした。
つまり、リニューアル時点ですでに「枯れかけ」だったところに、追い打ちをかける形でリニューアルの判断ミスが起きた、という構造です。
2022年、サイトを作り直すと判断しました
リニューアルの動機はいくつかありました。コーポレートサイトとしてのデザインの古さ、技術的な制約、ブランドの再定義。リニューアル自体は妥当な判断だったと、今でも思っています。
ただ、過去記事をどう扱うかで、間違えました。
リニューアルの設計段階で、過去の記事を見返した私は「これらの記事は今の自分の基準では品質が低い」と判断しました。具体的には、
- 文章が今の感覚で読むと拙い
- 情報が古くて現状と合っていない
- 構成が雑だと感じる
- 自分の名前で公開している記事として恥ずかしいと感じる
こうした感覚です。そして、こう考えました。「品質の低い記事を残すよりは、削除してきれいにしてから新しい記事を書いていこう」。
結果として、80〜90記事あったブログのうち大半を削除し、URLも基本的に全リセットして、新しいサイトをローンチしました。リダイレクトの設計も、対応する新記事がほぼなかったため、十分には行いませんでした。
ただし、すべてを捨てたわけではありません。5記事程度は別URLに移して、内容を更新したうえで残しました。残す基準として持っていたのは、「アクセスが多かったこと」と「憶測で書いていない、事実ベースの記事であること」の2つでした。後者については後ほど触れます。
SEOマイナスは、覚悟していました
ここは正直に書いておきたい大事な点です。記事を大量に削除すれば、SEO的に大きなマイナスが出ることは、当時の私も認識していました。被リンクが切れること、検索順位がリセットされること、ロングテールの流入が消えること。Webサイト制作を仕事にしている以上、知らなかったわけではありません。
それでも削除を選んだのは、「品質の低い記事を残し続けること」のほうが、自分にとっては受け入れがたかったからです。5記事だけは選別して残しましたが、それ以外の大半については「短期的なSEOの落ち込みは、新しい記事を書いていけば回復するだろう」と当時の自分は考えていました。
つまり、これは「知らなかった失敗」ではなく、「SEOマイナスを織り込み済みで判断したが、その想定が甘かった失敗」です。実際の落ち込みは、私が覚悟していたものよりも、はるかに深く、はるかに長く続きました。
完璧主義が、最大の資産を捨てさせました
このとき私の想定が甘かったのは、過去記事の価値の大きさでした。
SEOマイナス自体は織り込んでいました。ただ、過去記事にはSEO以外の価値もあったことへの意識が薄かったのです。今振り返ると、過去記事には3つの異なる軸の価値がありました。関連する話としてアクセスではなく「純度」で考えるでも書きましたが、コンテンツの価値はPVだけで測れるものではありません。
ひとつめは、SEO上の資産価値です。検索エンジンからの被リンク、内部リンク網、ロングテールクエリでの流入。ここは想定していた以上に大きく、回復にも想定以上の時間がかかっています。「短期的な落ち込みは新しい記事で取り戻せる」という想定が、想定の数倍甘かったということです。
ふたつめは、活動の証拠としての価値です。2017年から継続的に発信していたという履歴自体が、サイトの信頼性を構成していました。長期間にわたって運営され、継続的に情報が蓄積されているサイトには、短期間では作れない信頼の文脈があります。これは当時の私の判断軸には入っていませんでした。
みっつめは、実験記事のような”今では書けないもの”の価値です。「40日連続ブログ実験」のような記事は、当時だからこそ書けたものでした。今、改めて同じ実験をやり直すことはできても、2017年に既にやっていたという事実は再現できません。これも当時はほぼ意識していなかった軸です。
「品質」という単一の軸で評価したとき、SEO上の損失は覚悟していました。ただし他の2軸については、そもそも視野に入っていませんでした。捨てたものの大きさを、想定の数倍甘く見積もっていたわけです。
リニューアル後、問い合わせは月3〜4件に
リニューアル後、問い合わせ数はさらに落ちました。
- リニューアル直前:月7〜8件
- リニューアル後:月3〜4件
すでに枯れかけていたところに、過去資産を削除した影響が重なった形です。原因はおそらく複合的で、
- 過去記事の削除によるSEO評価のリセット
- URL全リセットによる被リンクの無効化
- 新サイトはまだコンテンツが薄く、検索エンジンが評価できない状態
- ロングテールクエリでの流入が一気に消えた
このうちのどれが主因かは、当時の私には正確には分かりませんでした。ただ、「過去記事を消したことが原因の大部分だ」という事実は、徐々に明確になっていきました。
ピーク時の月30件から見ると、約10分の1まで減ったことになります。新しく書いた記事が検索順位を取り戻すまでには、相当な時間がかかります。それも、過去にあった蓄積を取り戻すには到底足りない数の記事しか、リニューアル後は書いていませんでした。
残した5記事は、今も少し効いています
全削除と書きましたが、正確には5記事程度は別URLに移して内容を更新し、残しました。残した基準は2つでした。「アクセスが多かった」こと、そして「憶測で書いていない、事実ベースの記事」であること。
80〜90記事のうち5記事ですから、全体の5〜10%程度です。それでも残したぶんは、現在もそれなりにアクセスや問い合わせに寄与している実感があります。主軸とまでは言えませんが、消さなくてよかったと思える程度には機能しています。
今振り返ると、当時の私の選別基準そのものは、間違っていなかったと思います。「アクセスがある」「事実ベース」の2軸は、現在の評価軸とも矛盾しません。問題は基準ではなく、残した数が少なすぎたことでした。残した5記事の基準を、もっと多くの記事に適用していれば、もっと多く残せたはずです。
さらに数年、放置することになりました
リニューアル後も、状況は変わりませんでした。リピーター7割の事業構造のため、クライアントワーク自体は止まらず、自社サイトのコンテンツ制作は引き続き後回しになりました。
「忙しいから書けない」という状態が、リニューアル前後を通じて続いていた、という構造です。これは中小制作会社に共通する構造的ジレンマだと考えています。事業としての売上は維持できる、しかし新規開拓のための自社サイトは枯れていく、という静かな衰退です。痛みが急性ではなく慢性的なので、後回しになりやすい。
2025年、再びコンテンツを書き始めました
2025年から、ようやく自社サイトのコンテンツを徐々に増やしています。
直近では、「ホームページ制作 東京」で18位前後まで回復してきました。ピーク時の5位以内には届きませんが、ゼロから書き直している割には戻りつつあるという感覚はあります。問い合わせも、最低水準だった月3〜4件からは少しずつ増えてきています。
ただ、これはまだ戻り途中です。完全な回復には、もう数年かかると見ています。一度捨てた資産を取り戻すのは、ゼロから作るよりも時間がかかります。なぜなら、失った記事数・内部リンク・検索流入・更新履歴を、もう一度積み直す必要があるからです。
なお、2025年以降のAI検索の広がりを見ていると、当時残しておけばさらに価値があったはずだと感じる場面が多くあります。長期間の運営履歴や一次情報の蓄積は、AI検索においても参照される可能性が高い情報だと感じています(実測ベースの話はAI検索からの流入を約3倍にした12ヶ月の施策記録でまとめています)。「あのときの実験記事が残っていれば」と思うことが、最近は特に増えました。
当時の自分に伝えたい3つのこと
最後に、もし当時の自分に会えるなら、3つのことを伝えたいです。
ひとつめは、SEOマイナスの想定をもっと深刻に持て、ということです。「短期的な落ち込みは新しい記事で取り戻せる」と思っていましたが、実際の落ち込みは数年単位で続きました。残す基準は持っていたのに、その基準で残す範囲が狭すぎました。「アクセスがある」「事実ベース」の2軸で評価する記事を、5記事ではなく20〜30記事は残すべきだった、と今は思います。
ふたつめは、URLは絶対に維持しろ、ということです。仮に記事を削除する判断をしたとしても、URLだけは残してリダイレクトを設計するべきでした。被リンクと検索評価の蓄積は、URLに紐付いています。Google公式のURL変更を伴うサイト移行ガイドでも、リダイレクト設計の重要性は明示されています。
みっつめは、捨てる前に、必ずバックアップを取れ、ということです。物理的なバックアップだけでなく、Wayback Machine のような外部アーカイブにも記録を残しておく。後から「あの記事をもう一度公開したい」と思ったときに、原文が残っていれば再公開できます。私は今でも、2017年の「40日連続ブログ実験」の本文をどこにも見つけられていません。
サイトリニューアルをご検討の方へ
ENVY DESIGN ではこの経験を踏まえて、お客様のコーポレートサイトのリニューアルをご支援するときには、必ず過去資産の扱いを慎重に設計するようにしています。「古い記事は消しましょう」「URLは整理しましょう」と簡単に言わずに、その記事が今のSEO評価・活動履歴の中でどう機能しているかを確認したうえで、残す・統合する・URLだけ残す・本当に削除する、を個別に判断します。
同じことを検討している経営者・Web担当者の方には、ぜひ慎重に判断してほしいと思います。完璧主義は、ときに最大の資産を捨てさせるということを、私自身の失敗として共有しておきます。リニューアル時期そのものの判断軸についてはホームページの耐用年数は3〜5年|リニューアル時期の見極め方もあわせてご覧ください。サイトリニューアルや過去資産の扱いについてご相談のある方は、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
出典
- Schema.org(構造化データの公式仕様)
- Google Search Central(検索・構造化データの公式情報)
- Web Vitals(Core Web Vitalsの公式定義)
- Google検索公式ブログ(AI Overview等の発表情報)