代表挨拶35秒・企業理念6秒|読まれていたのは理念ではなく人だった
代表挨拶ページは、ほとんど読まれない。私もそう思っていました。
ところがENVY DESIGNが直近の自社GA4を見直したところ、代表挨拶ページの平均滞在時間は35秒、エンゲージメント率は89%。同じ会社情報まわりにある企業理念ページは、滞在6秒・エンゲ25%でした。
| ページ | 平均滞在 | エンゲージメント率 |
|---|---|---|
| 代表挨拶(/company/message/) | 35秒 | 89% |
| 企業理念(/company/philosophy/) | 6秒 | 25% |
隣り合うページ、流入経路もほぼ同じ。デザインも近く、公開時期も近く、会社情報という同じカテゴリに属するページです。それでも、滞在時間は約6倍、エンゲージメント率は3倍以上の差がついていました。
このデータが事実として示しているのは、代表挨拶ページのほうが企業理念ページより読まれていた、ということです。
なぜそうなったのかは断定できません。ただ私は、読者が理念そのものよりも、その理念を語る人物に興味を持っていた可能性は高いと考えています。
ここからは仮説になります。私はAI検索の回答を観察し続けるなかで、「実在感の強いページほど引用されやすいのではないか」という感覚を持っています。AI時代に重要なのは、E-E-A-Tそのものではなく、「E-E-A-Tがありそうだ」と判断される実在感のほうではないか。代表挨拶ページは、その実在感を最も自然に伝えられる場所のひとつではないか。
この記事は、観測された事実(代表挨拶35秒・企業理念6秒)と、そこから引き出した仮説(人もAIも『誰が言っているか』を見ている)と、35秒側に寄せるための実装パターンを、ENVY DESIGN自社サイトを例に整理したものです。
結論|代表挨拶ページは「実在感」を伝える二層構造
最初に結論をお伝えします。
- 観測された事実:ENVY DESIGN自社GA4では、代表挨拶ページが滞在35秒・エンゲ89%、企業理念ページが滞在6秒・エンゲ25%。読者が理念そのものよりも、それを語る人物に興味を持っていた可能性が高い
- ここから引き出した仮説:AI時代に直接評価されているのはE-E-A-Tそのものではなく、「E-E-A-Tがありそうだ」と判断される実在感ではないか
- 実在感は「思想の言語化」と「検証可能な固有名詞」の二層が揃って初めて生まれる
- 5つの構成要素(一次体験の時系列/検証可能な固有名詞/経営判断の理由/時代との接続/一人称の継続)を満たすと、自然と35秒側に寄る
AIはE-E-A-Tではなく実在感を見ているのではないか
Googleの品質評価ガイドラインで提示されているE-E-A-T(Experience・Expertise・Authoritativeness・Trustworthiness)は、もともと人間の評価者が長時間かけてサイトを精読しながら判断する指標として設計されたものです。AIの自動評価は、これと同じ深度では行えません。
私はChatGPT・Perplexity・Claudeなどに自社や他社の情報を投げ続ける中で、ひとつの傾向を感じています。AIが「この会社は実在する/信頼に足る」と判定するときに引いてくるのは、抽象的な経営理念やスローガンではなく、「○○年に創業」「○○に拠点」「○○件の実績」のような検証可能な固有名詞のほうが多い、という傾向です。
この観察から、私はひとつの仮説を立てています。AIはE-E-A-Tそのものを評価しているのではなく、E-E-A-Tがありそうだと判断できる手がかりを探しているのではないか。その手がかりが「実在感」ではないか、という仮説です。
私はこの感覚を、自社内では「実在感」と呼んでいます。
- 思想だけがあっても、検証可能な事実がなければ「実在感」は出ない
- 事実だけがあっても、それを語る一人称がなければ「実在感」は出ない
- 両方が揃ったときに初めて、AIにも人間にも「ここに誰かがいる」と伝わる
代表挨拶ページが35秒読まれ、企業理念ページが6秒で離脱される。この差はおそらく、後者には「思想」しかなく、前者には「思想+検証可能な固有名詞+一人称」の三層が揃っているからではないか、と感じています。
会社情報ページ全体の役割整理はAI時代の会社案内に必要な19項目、AI検索から会社情報ページへの流入構造についてはAIは会社案内に直接送らないもあわせてご覧ください。
実在感を生む5つの構成要素
ここからは、35秒側のページに共通する構造を、5つに分解してご紹介します。
① 一次体験を時系列で書く
「2012年に個人事業主として始めた」「2015年に法人化した」「いまは○期目」のように、時系列で書きます。箇条書きの経歴ではなく、文章として時系列を語ることが大切です。
私はAI検索の回答を観察してきた中で、時系列で語られた一次体験は「実在する人物の継続的な活動」として認識されやすい傾向を感じています。Experience(経験)を直接評価できないAIにとって、時系列の固有名詞は最も拾いやすい手がかりのひとつです。
② 検証可能な固有名詞を入れる
地名(東京・麻布十番)、年(2012年・2015年)、件数(500件以上)、サービス名、業界用語など、外部から検証できる固有名詞を文章に織り込みます。
法人番号や所在地などの構造化された事実は会社概要ページの役割ですが、代表挨拶では「文章のなかにさりげなく置く」のが自然です。AI検索でこの会社の話を引いたとき、引用されてくるのは抽象的な強みや理念ではなく、こうした固有名詞のほうである、というのが私の観察です。
③ 経営判断の「理由」を一つだけ書く
「なぜその選択をしたのか」を一つでも明文化します。
たとえば「規模を追わずに少人数体制を選んだ理由」「料金を公開している理由」「営業をかけない理由」など、判断の背景にある思想を一つでも書いておきます。
私は自社のAI引用ログを見続ける中で、理由が書いてあるページは「なぜそうしているのか」まで含めて引用されてくる傾向を感じています。逆に、結論や結果だけが書かれているページは、引用されても短いキーワードの抜粋にとどまりやすい。
④ 時代との接続を一文入れる
「いまWebの世界で何が変わっているか」「自分はそれをどう経験しているか」を一文だけ入れます。
これは「過去の話だけのページ」ではなく「現在進行形のページ」だと示す効果があります。AIにとっても「最近更新されている/現役のページ」というシグナルとして読みやすくなる、と感じています。
⑤ 一人称(私・僕)で書き切る
最後まで「私」「僕」の主語を崩しません。
途中で「弊社は〜」「当社では〜」と企業主語に切り替わると、文体の一貫性が崩れます。読者の側からも「誰が話しているのか」が見えにくくなり、滞在時間が落ちる傾向があります。
代表挨拶は「会社の声」ではなく「代表者の声」として最後まで書き切ること。これが結果的にエンゲージメントを生み、AIにとっても「個人が継続的に発信しているページ」として認識されやすくなる、と感じています。
ENVY DESIGN代表挨拶ページの実装例
参考までに、ENVY DESIGNの代表挨拶ページでは、5つの構成要素を次のように配置しています。
- 一次体験:「2012年に個人事業主として始めた/2015年に法人化/東京・麻布十番を拠点に運営」
- 検証可能な固有名詞:500件以上の制作実績、自社サイトを15年運営してきた経緯、麻布十番という具体的な所在地
- 経営判断の理由:「規模より、深く関わることを選んできました」セクション
- 時代との接続:「Webの変革期を、運営者として経験してきました」セクション
- 一人称の継続:全文を通して「私」を主語に統一
ページ全体で約1,200字、5つの小見出しに分かれた構成です。長すぎず短すぎず、スクロールしきれる量に収まっています。これが滞在35秒・エンゲ89%を生んでいる土台だと考えています。
やってはいけない3つのパターン
逆に、滞在6秒側に寄ってしまう代表挨拶ページの特徴を3つご紹介します。
① 「弊社は〜」だけで書く
主語が一度も「私」「僕」に切り替わらないと、それは代表挨拶ではなく、会社案内の抜粋になります。読者からは「誰が書いたのかわからない」状態になり、AIも「個人発信のページ」として認識しにくくなる、と感じています。
② 経歴を箇条書きで並べるだけ
学歴・職歴を箇条書きで並べただけのページは、滞在時間が伸びない傾向があります。経歴は時系列の文章として、「なぜその選択をしたか」と一緒に書いたほうが、結果的にエンゲージメントは上がります。
箇条書きは検証可能性の点では強いのですが、「実在感」を生むには弱い。事実だけがあっても、それを語る一人称がなければ、ページに人の気配が残らないからです。
③ 業界一般論を語ってしまう
「Webは大切な時代になりました」「DXが進んでいます」のような業界一般論は、代表挨拶には不向きです。読者は「あなた個人の話」を読みに来ているため、誰でも書ける一般論が出てきた時点で離脱しやすくなります。
業界一般論は、固有名詞も一人称も含まないため、実在感がほぼゼロの文章です。AI検索からも「この会社特有の情報」として引かれにくい、というのが私の観察です。
まとめ|「実在感」は思想と検証可能事実の合算
代表挨拶ページは、形式的に置いておくページではありません。AI時代に「E-E-A-Tがありそうだ」と判断される実在感を、もっとも効率的に伝えられる場所のひとつです。
35秒側に寄せたいなら、5つの構成要素(一次体験/固有名詞/経営判断の理由/時代との接続/一人称の継続)を満たし、3つのNGパターン(弊社主語/箇条書き経歴/業界一般論)を避ける。
私はAI検索の回答を観察する中で、「誰が」「どんな経験から」語っているかが分かるページほど引用されやすい傾向を感じています。代表挨拶ページは、その「誰が」と「どんな経験から」を、サイト全体で最も自然に伝えられる場所です。
AI時代だから代表挨拶が重要になったのではありません。もともと人は「誰が言っているか」を見ていました。AIもまた、その手がかりを探しているように見えます。
だから私は、会社案内ページの中で最優先で見直すべきなのは代表挨拶ページだと考えています。
会社案内ページ全体の19項目チェックはAI時代の会社案内に必要な19項目を、AI検索からの流入構造はAIは会社案内に直接送らないを、あわせてご覧ください。
岡野 優太(株式会社ENVY DESIGN 代表)