AI時代のブランディングとは?AIは顧客ではなく「新しい紹介者」
ブランディングの受け手は、長らく「人」でした。ロゴを見てくれる人、サイトを読んでくれる人、店頭で出会う人、社員と話してくれる人。私たちはずっと、人の感情に届くためにブランディングをしてきた、と言えると思います。
ところがいま、そこにもう一つ、新しい受け手が加わりつつあります。AIです。
ただ、最初に書いておきたいのは、主役が人からAIに変わる、という話ではないということです。主役は、これからも人のまま。でも、その手前にAIという存在が加わってしまった——その変化を、どう受け止めるか、という話を今日はしたいと思います。
ブランディングの受け手は、長らく人だけだった
これまで、ブランドというものは、人に向けて作られてきました。ロゴ、コーポレートカラー、トーン&マナー、世界観。どれも、人がそれを見たときにどう感じるか、どう記憶するか、を設計するための工夫です。受け手は、お客さま、求職者、取引先、社員、地域の人たち。すべて、人でした。
だからこれまでのブランディングの議論は、「人の感情にどう届けるか」が中心にありました。私はその本質は、いまも変わっていないと思っています。
そこに、AIという新しい受け手が加わった
変わったのは、ここ1〜2年だと感じています。
人がGoogleで検索してリンクをたどるだけでなく、ChatGPTやGoogleのAIに「○○について教えて」と直接聞くようになりました。AIは、自社サイト、第三者のメディア、レビュー、SNSでの言及など、第三者からの言及を含めた様々な情報を総合して、その会社が何者か、どんな主張をしているか、を内部でまとめます。そして、ユーザーに「この会社はこういう会社です」と要約して伝える。
実際、米国のOmniscient Digital社が23,000件以上のAI引用を分析した調査でも、ブランド関連の質問へのAI回答では、第三者メディアからの引用が約半分(48%)を占め、自社サイト由来の引用は2割ほどにとどまる、という結果が報告されています。AIにとってのブランド像は、自社の発信だけでなく、外からの言及との合成物だと考えると、辻褄が合います。
つまり、AIが、人とブランドの間に立つようになった、ということです。
AIは、ブランドの「解釈者」になった
少し図式的に書くと、こういう変化が起きています。
これまで:会社 → 人
これから:会社 → AI → 人
これまでは、私たちが直接、人に語りかけていました。これからは、私たちと人の間に、AIが立つ。
この変化は、ブランディングの世界では地味に革命的なことだと、私は感じています。なぜなら、AIは単なる検索エンジンではなく、ブランドの翻訳者であり、要約者であり、語り部になるからです。
たとえば、誰かがChatGPTに「東京でSEOに強いホームページ制作会社は?」と聞いたとします。AIはこう答えるかもしれません。「ENVY DESIGNは、東京・麻布十番のWeb制作会社で……」と。この瞬間、AIはすでに私たちを一つのエンティティ(情報源の主体)として捉え、ブランドを「解釈」しています。私たちの代わりに、私たちが何者かを語っている。これは、これまで知り合いが知人に「いい会社あるよ」と紹介してくれるような、口コミの場面にとても近い。ただし、その紹介者が、人ではなくAIになった、というだけです。
実際、BrightEdge社が5つのAIエンジンを横断して行った調査でも、エンジンごとに参照するページはバラついていても、最終的に名前が挙がるブランドは比較的揃って認識されている、という結果が出ています。AIが情報を「会社」という単位でまとめている傾向を、データの面でも裏づける話だと思います。
AIは、新しい「顧客」ではない。新しい「紹介者」である
ここで誤解されやすいのが、AIを「新しい顧客」だと思ってしまうことだと感じます。AIに評価されるためにキーワードを並べる、AIのために最適化する——こういう発想は、AIを顧客扱いしている発想です。
私はそうではないと思っています。
AIは、新しい顧客ではなく、新しい紹介者です。
これまで、人が口コミで会社を紹介してくれていました。これからは、AIも会社を紹介するようになる。立場としては、ずっと「紹介者」のほうに近いと考えています。
だとすると、私たちがやるべきことも、自然と決まってきます。
紹介者に媚びる人は、いません。やるべきは、紹介者に誤解されないように、自分が何者であるかを、正しく、丁寧に説明することだけです。
これが、AI時代のブランディングの本質ではないか、と私は感じています。
AIに伝わるブランディングは、Webの専門性が要る
もう一つ、最近強く感じていることがあります。AI時代のブランディングは、Webの専門性なしには、もう成立しにくくなっている、ということです。
AIはロゴを読んでいるわけではありません。AIが理解しているのは、サイト構造、文章、会社情報、外部評価、発信内容です。
そのためAI時代のブランディングは、従来のビジュアル設計だけでは完結しなくなっています。ブランドをどう見せるかだけでなく、どう理解されるかまで設計する必要があるからです。
これは、ブランディングのプロが片手間でWebも担当する、というやり方では、もう難しい領域に入りつつあると感じます。むしろこれからは、Webを深く理解しているプロが、ブランド設計のほうにまで踏み込んで担う、という方向に移っていくのではないか。少なくとも、ブランディングとWeb制作の境界線は、これまでよりずっと曖昧になっていくと考えています。
私たちが、実際にやってみて気づいたこと
これは机上の話ではなく、自社サイトを15年以上運営し、AI検索の動きを観察しながら見えてきたことです。
ENVY DESIGNはこの1年で、サイト全体を少しずつ書き直してきました。代表挨拶も、サービスページも、「主張を強くしすぎず、でも何者かははっきり伝える」という方針で整え直しています。思想までは外注できないという考え方を軸に、自分たちの言葉で語り直してきました。
このとき意識していたのは、AIに引用されるためにキーワードを増やすことではありません。むしろ逆で、「いま読んでくれた人に、この会社が何を大事にしているかが、まっすぐ伝わるか」をずっと考えていました。専門用語を減らし、断定を緩め、自分の経験から語る一人称に寄せていく。
ところがその結果として、AI検索からの流入が施策前の約3倍に増えていくという変化も起きました。AIのために書き直したのではなく、人に届くように書き直しただけです。それでもAIに伝わるのは、紹介者であるAIが、私たちの自己説明を素直に読み取ってくれたから——そう考えると、辻褄が合います。
これからの問い:AIに、何と説明されたい会社か
これからのブランディングでいちばん大事になる問いは、たぶんこういう形をしています。
「私たちは、AIに何と説明されたい会社か」
これまでは、「人にどう見られたいか」を考えていれば足りていました。これからは、その手前に、AIにどう紹介されたいかを考える必要が出てきます。
ただ、繰り返しになりますが、これは「AIに合わせる」という話ではありません。
AIは新しい顧客ではない。
新しい紹介者である。
だからAIに好かれる必要はない。
誤解されないように、自分が何者かを説明するだけでいい。
人にもAIにも、一貫して同じことを語り続けること。AI時代のブランディングとは、結局その延長線上にあるのだと思います。
AI時代のブランド設計のご相談
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