指名検索が急増した原因はAI検索かもしれない|正式社名クエリの実測
AI経由の訪問数を、ChatGPTやPerplexityなどの参照元(リファラー)で数えている方は多いと思います。私たちも毎回そうやって隔週レポートを出してきました。
先にお伝えします。それまで少なくとも3か月間、一度も記録されたことのなかった「株式会社ENVY DESIGN」という正式社名そのままの検索クエリが、2026年5月に突然現れました。しかも出現した月から、検索した人の半分以上がクリックしています。件数はまだ少ないものの、存在しなかった検索行動が発生した、という変化そのものに意味があると私たちは考えています。そしてこの変化は、参照元では拾えないAI起点の流入が通常の検索流入に混ざり始めた兆候かもしれません。
この記事では、このクエリの出現データと、そこから立てた「AIの回答で見た社名をコピペして検索しているのではないか」という仮説、そしてその確かめ方を書きます。断定できる話ではありません。ただ、AI流入の計測を考えるうえで見落とされやすい論点だと考えています。
ある月から「株式会社ENVY DESIGN」という検索が現れました
【調査データ】Search Consoleで社名系のクエリを月別に追うと、正式社名の完全一致形「株式会社envy design」は、計測を確認できた2026年2月から4月までの3か月間、一度も記録がありませんでした。それが2026年5月に初めて出現し、以降は途切れず継続しています。5〜7月の累計で表示31回・クリック16回、CTRは約52%。直近28日に絞るとクリック12回・表示18回でCTR約67%に達しています。
| 月 | クリック | 表示回数 | CTR |
|---|---|---|---|
| 2026年2月 | 0 | 0 | – |
| 2026年3月 | 0 | 0 | – |
| 2026年4月 | 0 | 0 | – |
| 2026年5月 | 2 | 5 | 40% |
| 2026年6月 | 8 | 17 | 47% |
| 2026年7月(19日まで) | 6 | 9 | 67% |
つまりこの観測には、柱が2本あります。ひとつは、存在しなかった検索行動がゼロから発生したこと。もうひとつは、CTR50%超という水準です。通常の検索ではまず見ない数字で、検索した人の半分以上が迷わず公式サイトを開いている。この2つが重なると、偶然の一致や計測ノイズでは説明が難しくなります。残るのは、正確な社名の文字列を持っていて、目的が明確な人が検索している、という像です。
【調査条件】Search Console/対象プロパティ envydesign.jp/期間 2026年2月1日〜7月19日/「株式会社」を含むクエリを抽出/検索タイプ・国・デバイス指定なし/データ取得日 2026年7月21日。クリック数の少ないクエリはSearch Consoleに記録されない場合があります。また、部分形の「株式会社envy」というクエリは以前から存在しますが、同名の企業が国内に複数あり他社を探す検索が混在すると考えられるため、本記事の分析対象から除外しています。なお、Search Consoleはクエリを小文字に正規化して記録するため、実際に入力された文字の大小は確認できません。
「株式会社」を自分で打つ人は、ほとんどいないはずです
ここで検索行動を想像してみます。私たちの社名を知っている人が検索するとき、普通は「envy design」や「エンヴィデザイン」と打ちます。「株式会社」を付けて、しかも英字の正式表記で入力するのは、手打ちとしてはかなり不自然です。
手打ちではないとすると、残る経路はひとつです。どこかに表示された正式社名の文字列を、選択してコピーし、検索窓に貼り付ける。つまりコピー&ペーストです。
この読みを裏付ける傍証が、表記の集中です。手打ちの指名検索であれば、「エンヴィデザイン」のようなかな表記や、社名の一部だけの表記など、複数のバリエーションに分散するのが自然です。しかし実際にクリックが発生しているのは、株式会社を含む英字の完全一致形にほぼ集中していました。検索が特定の文字列に集中するのは、同じソースからコピーされた文字列が使われている場合に典型的なパターンと考えられます。
コピー元はどこか。AIの回答面が最有力、というのが私たちの仮説です
【仮説】ここから先は推測です。コピー元の候補を挙げると、AIの回答画面(ChatGPTやAI Overviewsなど)、私たちを引用・掲載した外部記事、請求書や契約書などの書面、SNSでの言及などが考えられます。
このうち私たちがAIの回答面を最有力と見ている理由は2つあります。
ひとつは表記の性質です。生成AIやAIによる検索の要約は、会社を紹介するとき、サイトの構造化データや会社概要ページを参照して正式名称で表記する傾向があります。人間が口語で「エンヴィデザイン」と書くのに対し、AIは「株式会社ENVY DESIGN」と書く。コピーされる文字列として、正式表記の露出量が最も多いのは、現在ではAIの回答面だと考えられます。
もうひとつは時期の一致です。このクエリが初めて現れた2026年5月は、私たちのサイトでAIサービスを参照元とする訪問が月70セッション超へ急増した時期と重なります。AIの回答に社名が出る機会が増えたタイミングで、正式社名のコピペ検索が生まれた。因果は証明できませんが、時系列としては整合します。なお、私たちが外部メディアに引用された事例は7月中旬で、5月の初出現より後です。外部記事だけではこのクエリの出現時期を説明できません。
繰り返しますが、これは自社1サイト・少ないクリック数にもとづく仮説であり、断定はできません。コピー元が複数混ざっている可能性も十分あります。
この仮説が正しければ、AI経由の流入は過小評価されています
なぜこの小さなクエリにこだわるのか。AI流入の計測方法に関わるからです。
一般的にAI経由の訪問は、chatgpt.comなどの参照元情報で識別します。私たちの隔週レポートもこの方式です。しかし、AIの回答で会社を知り、検索し直して訪問した人は、参照元上はGoogle検索からの流入として記録されます。起点はAIなのに、データにはAIの痕跡が残らない。
この経路が実在するなら、参照元ベースのAI流入数は、AIが実際に連れてきた訪問の一部しか捉えていないことになります。AIからの直接流入が少なく見えても、指名検索やブランド認知の側にAIの影響が染み出している可能性がある。AI施策の効果を参照元の数字だけで判断すると、実態より小さく見積もる恐れがあります。
私たちのデータでも、AIサービスからの直接訪問が伸び悩んだ月に、指名検索のクリックは増えていました。この2つは別々の経路として動いており、片方だけを見てAIの影響を判断するのは早い、というのが現時点の実感です。
自社サイトで確かめる方法
この仮説は、Search Consoleがあれば誰でも自社で点検できます。私たちが実際に行った手順です。
- 正式社名の完全一致クエリを探す。「株式会社」や「(株)」を含むクエリを抽出し、自社の正式表記そのままの検索が存在するか、いつから現れたかを確認します。
- 表記ゆれの分布を見る。かな表記や略称に分散していれば手打ち中心、特定の正式表記に集中していればコピペの可能性が高まると考えられます。
- 出現時期を自社のAI露出と重ねる。AI経由の訪問が増えた時期、AIの回答に自社名が出始めた時期と、クエリの初出現時期を並べます。
- AIに自社を聞いて表記を確認する。主要なAIに自社について質問し、回答内の社名表記が検索クエリの文字列と一致するかを見ます。
どれも決定的な証明にはなりませんが、複数が揃えば仮説の確度は上がります。逆に、正式社名クエリが昔から一定量ある会社では、AI以前からの与信確認の検索と区別がつかない点には注意が必要です。私たち自身も、このクエリ群の定点観測に加えて、問い合わせ時の認知経路の確認とコンバージョン計測の整備を進めます。この検索で訪れた人がサイトで何をしているかという行動面の分析も、計測を整えた上で続報として報告する予定です。
よくある質問
リファラーに残らないAI流入とは何ですか?
AIの回答で企業やサービスを知った人が、AIの画面から直接リンクを開くのではなく、あらためて検索エンジンで検索して訪問する経路を指しています。この場合、アクセス解析上は検索エンジンからの流入として記録され、参照元にAIサービスの痕跡は残りません。
指名検索が増えたらAIの影響と考えていいですか?
それだけでは判断できません。指名検索は広告、SNS、紹介、報道など多くの要因で増えます。表記の特徴(正式名称への集中・表記ゆれの少なさ)や出現時期をあわせて見ることで、AI起点の可能性をひとつの仮説として検討できる、という段階です。
AI経由の流入はどうやって計測すればいいですか?
基本は参照元にAIサービスのドメインを含むセッションの集計です。ただし本記事の仮説のとおり、検索を経由するAI起点の訪問はこの方法では拾えないと考えられます。参照元ベースの数字と、指名検索・ブランド系クエリの推移をセットで見ることをおすすめします。
正式社名で検索されるのは良いことですか?
確認行動を伴う指名検索は、発注や応募など具体的な行動の手前で起きることが多いと考えられます。件数が小さくても、サイトの成果に近い検索として観測する価値があります。
自社でも同じ分析はできますか?
Search Consoleが導入されていれば可能です。クエリを「株式会社」などでフィルタし、完全一致形の有無・初出現時期・表記ゆれの分布を確認してください。月ごとに並べると変化が見えやすくなります。
まとめ|参照元の数字は、AIの影響の一部しか映していないかもしれません
正式社名の完全一致クエリの出現は、件数こそ少ないものの、存在しなかった検索行動が発生したという質的な変化です。これがAIの影響が参照元データの外側に染み出し始めている兆候だとすれば、AI流入の計測はリファラーだけでは足りない段階に入りつつあります。私たちはこのクエリ群を定点観測に加え、変化があれば続報を書きます。エンティティとしての認知の話は4つのAIに同じ会社を聞いた実測やエンティティの用語解説でも扱っています。AI検索対策の全体像はAIO・GEO対策サービスをご覧ください。
出典
- Google検索セントラル: AI機能とウェブサイト:Google検索のAI機能における表示・計測の公式ドキュメント
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