デザインに強いWeb制作会社の見極め方|表現力と設計力は別物
制作会社のサイトを見比べると、どの会社も実績がきれいで、どこも「デザインに強い」ように見えます。見た目で選ぼうとするほど、決められなくなる。デザインを重視して会社を探している方ほど、この状態に陥りやすいと感じています。
先にお伝えします。「デザインに強い」という言葉には、表現力と設計力という2つの別物が混ざっています。表現力は、ブランドの世界観を美しく形にする力。設計力は、情報を整理し、見た人を目的の行動へ導く力です。どちらも「デザインの力」ですが、鍛え方も、確認の仕方も、向いている案件も違います。
このページでは、この2つを分けた上で、実績の見方、アワードの読み方、依頼前に聞くべき質問を解説します。私たちENVY DESIGNはデザイン工程を含めて内製率約90%の制作会社で、「デザインに強い」と名乗る側の当事者です。その前提でお読みください。
このページでわかること
- 「デザインに強い」を構成する表現力と設計力の違い
- 「おしゃれにしたい」という要望の中に隠れているもの
- 制作実績を「好み」以外の軸で見る方法
- デザインアワードの読み方
- 依頼前に制作会社へ聞いておきたい質問
「デザインに強い」には2種類ある
表現力とは、ビジュアルの完成度でブランドの世界観を伝える力です。写真・タイポグラフィ・余白・動き。採用サイトやブランドサイトのように、「この会社、なんか良い」という印象そのものが成果になる案件で主役になります。
設計力とは、情報の整理と導線の設計で、見た人を迷わせず行動につなげる力です。どの情報をどの順番で見せるか、問い合わせまでの道筋をどう作るか。コーポレートサイトやBtoBサイトのように、「伝わること」「動いてもらうこと」が成果になる案件で主役になります。
多くの案件では両方が必要ですが、比重は目的によって変わります。まず「印象と行動のどちらに、より比重を置くのか」を決めると、確認すべきデザインの力がどちらなのかが定まります。
当事者の観察を1つ共有します。初回のご相談で「おしゃれなサイトにしたい」というご要望をいただくことは珍しくありません。ただ、その言葉の中身を掘り下げていくと、「同業他社のサイトに見劣りしたくない」「問い合わせにつながる安心感を出したい」「採用候補者に古い会社だと思われたくない」といった、印象そのものではなく、印象を通じて得たい成果が出てくることが少なくありません。
つまり「おしゃれにしたい」は、表現力の要望に見えて、実際には設計力側の課題(信頼を伝える・行動につなげる)を含んでいることが多い、というのが実務での実感です(あくまで私たちに相談が来た範囲の定性的な観察です)。
だからこそ私たちは、「おしゃれにしたい」という言葉をそのままデザイン要件にはしません。その言葉の裏にある「誰に、どう思われ、どう動いてほしいのか」まで確認して、初めてデザインの方向性を決めます。会社選びの場面でも、同じ確認が使えます。「おしゃれ」の中身を自社で一度言語化してみる。それだけで、確認すべきデザインの力がどちらなのかが見えてきます。
実績を「好み」以外の軸で見る3つの方法
「なぜこのデザインにしたのか」の説明があるか
実績ページに完成画像だけが並んでいるか、制作の意図(誰に何を伝えるためにこの表現を選んだか)まで書かれているかを見ます。意図を言語化できる会社は、好みが合わなかったときにも「なぜ」を共有しながら修正を進められます。逆に、意図の説明がない場合、デザインの判断基準が担当デザイナーの感覚に依存している可能性があります。
自社と「同じ種類の成果」を狙った実績があるか
きれいな実績がある、ではなく、自社と同じ成果(印象づくり/問い合わせ獲得/採用応募)を狙った実績があるかで見ます。表現力を中心に実績を見て行動設計の案件を依頼すると、「美しいが動かないサイトになる」といったミスマッチが起きる可能性があります。
アワードは「表現力の指標」として読む
デザインアワードの受賞歴は、表現力を確認する材料の一つになります。ただし、アワードで評価される項目と、問い合わせ数や採用応募数などの事業成果は同じではありません。受賞歴は表現力の材料として読み、設計力は実績の意図説明や提案の中身で別途確認する、と分けることをおすすめします。
「デザインは気に入っているのに、成果が出ない」はなぜ起きるか
表現力だけで会社を選んだ場合に起きやすいのが、この状態です。完成したサイトは美しく、社内の評判も良い。しかし問い合わせは増えない。これはデザインの失敗ではなく、選定の段階で「印象の成果」と「行動の成果」を分けなかったことによるミスマッチだと考えられます。
この症状に既に心当たりがある場合は、「デザインは気に入っているのに、ホームページから成果が出ない」で原因と対処を詳しく扱っています。
ENVY DESIGNの立ち位置と、正直な向き不向き
当事者として開示します。私たちはデザインを社内で制作しており、制作全体でも内製率は約90%です。私たちが重心を置いているのは設計力の側です。たとえば自社の料金ページでは、AI経由の訪問が増えた実測を受けて、見た目ではなく情報の載せ方と順番を再設計しました(経緯は「BtoB料金ページに5項目を実装した話」で公開しています)。デザインの工程で何をしているかは制作の流れ Step 4でも公開しています。
正直にお伝えすると、アワード受賞を狙うような世界観のビジュアル表現を最優先する案件であれば、デザイン特化型の会社が向いています。会社のタイプ分類は「東京でWeb制作会社を比較する前に|4タイプ分類と7つの比較軸」で解説しているので、表現力最優先の方はそちらでデザイン特化型の探し方をご覧ください。
依頼前に聞いておきたい4つの質問
- この実績のデザインは、誰に何を伝えるためにこの表現にしたのですか
- 私たちのサイトの成果を「印象」と「行動」のどちらに置いて提案しますか
- デザイン案は何案出ますか。修正は何回、どう進めますか
- 公開後、デザインの効果はどう確認しますか
3つ目の進め方については、私たちの回答例を「デザインは何案提示してもらえますか?」で公開しています。4つの質問すべてに具体的に答えられる会社であれば、表現力・設計力のどちらを頼む場合でも、判断基準を共有しながら進められると考えられます。
よくある質問
「おしゃれであること」自体が目的(ブランドの世界観づくり)なら、表現力を最優先で構いません。ただし本文の観察のとおり、「おしゃれにしたい」の中身に問い合わせや採用への期待が含まれていることも多いため、まず中身を言語化してから決めることをおすすめします。
アワードを受賞している会社なら安心ですか?
表現力の確認材料の一つになります。ただしアワードで評価される項目と事業成果は同じではないため、自社の目的が行動の成果にある場合は、実績の意図説明や提案内容で設計力を別途確認することをおすすめします。
デザインの良し悪しが自分で判断できなくても大丈夫ですか?
大丈夫です。発注者に必要なのはデザインの審美眼ではなく、「誰に何を伝えたいか」という事業側の判断です。判断に自信がない場合の考え方は「デザインの良し悪しが、自分で判断できない」で詳しく扱っています。まずは本記事の4つの質問を使い、説明の具体性で会社を見てください。
デザインのイメージが固まっていなくても依頼できますか?
できます。むしろイメージが固まっていない段階から、目的の整理と一緒に方向性を作っていく方が、結果的にミスマッチが少なくなります。詳しくは「デザインのイメージが決まっていなくても依頼できますか?」をご覧ください。
デザインだけを別の会社に頼むことはできますか?
分離発注は可能ですが、デザインと実装・設計の間で意図の伝達コストが発生します。分ける場合は、両社の役割と責任範囲を契約前に明確にしておくことをおすすめします。
「印象と行動、どちらに比重を置くか決められない」段階でもご相談いただけます
自社のサイトの成果をどこに置くべきか、という手前の整理からのご相談を歓迎しています。事業と顧客の話を伺いながら、表現力と設計力のどちらに比重を置くべきかを一緒に考えます。