メディアキット(プレスキット)の作り方|AIにも引用される公開方法とは

AIO/GEO 戦略・思想

株式会社ENVY DESIGN

代表取締役/ディレクター/デザイナー

会社情報をまとめた「メディアキット(プレスキット)」は、これまで人間の記者のために作られてきました。けれど近年は、記者だけでなく、生成AIも会社情報を読み取る重要な利用者になりつつあります。本記事では、メディアキットの基本的な作り方を押さえたうえで、「記者」と「AI検索」の両方に向けた公開方法を整理します。結論を先に言うと、ダウンロードさせる形だけで完結させると、AI検索の引用元として扱われにくくなる可能性があります。

会社情報を読むのは、もう人間の記者だけではない

メディアキットを作る目的は、長らく「記者が会社を取り上げやすくすること」でした。多忙な記者が事実確認や画像取得の手間をかけずに記事化できるよう、会社の基本情報を一か所にまとめておく。この役割自体は今も変わりません。

ただ、読み手の構成が変わってきました。BtoBの意思決定者や専門領域のリサーチでは、Google検索より先にAIへ質問する人が増えています。会社名で調べられた際も、生成AIが情報を整理・要約する場面が見られるようになってきました。

私自身、これに近い経験があります。以前、あるセミナーの特典動画に出演させてもらったことがあるのですが、きっかけは私からの売り込みではなく、Xでの発信とサイトを見た主催者側から声がかかったことでした。専用の取材ページを用意していたわけではありません。Xとサイトに散らばっていた情報を、たまたま拾ってもらえた、という運任せの結果です。

このとき思ったのは、「拾われる入口を、運任せにせず意図して設計できないか」ということでした。会社が「AIに存在しているか」という問いについては、「良い会社」と「AIに存在する会社」は違う|存在ギャップの正体でも整理しています。メディアキットは、その「拾われる入口」を作る手段のひとつだと考えています。

メディアキットとは何か|「器」と「中身」を分けて考える

まず言葉を整理します。メディアキット(プレスキット)とは、記者・編集者・ライター、場合によっては投資家やインフルエンサーなど、社外の関係者向けに、会社の情報や素材をひとまとめにした資料一式を指します。会社概要、ロゴ、代表プロフィール、画像素材、過去のプレスリリースなどが典型的な中身です。

ここで分けて考えたいのが、「器」と「中身」です。

器:取材・メディア向けの専用ページ(プレスページ)

サイト内に「Press」「Pressページ/プレスページ」「メディア向け情報」などの名称で設ける、メディア関係者の入口にあたるページです(英語圏では Press Room や Newsroom、Press Page と呼ばれることが多く、その中に Media Kit を配置する構成も一般的です)。連絡導線、取材可能なテーマ、掲載実績などを含みます。

中身:メディアキットそのもの

その器に置く、会社のファクトと素材の束です。一般的に「メディアキットを公開する」と言うとき、指しているのはこの中身のほうです。

つまり「プレスページ(専用ページ)を作る」が上位の話で、「メディアキットを公開する」はその中に置く素材の話、という関係になります。両者はほぼ同じ文脈で語られますが、分けておくと設計がぶれません。

メディアキットの作り方|まずは載せる項目を網羅する

中身として用意しておきたい項目を、ひととおり挙げます。すべてを一度にそろえる必要はなく、未着手のものを一つずつ減らしていく進め方で十分だと考えています。

  • 会社概要:社名・所在地・代表者・設立・事業内容など、基本の事実
  • メディア向け連絡先:問い合わせの導線。「取材の方はこちら」と一言あるだけでも、記者側の心理的なハードルは下がる傾向があります
  • 代表プロフィール+顔写真:誰が語っているのかを示す情報
  • 高解像度ロゴ:記事内で正しく使ってもらうための素材
  • ファクトシート:自社で計測した数値や実績など、検証できる一次データ
  • 取材可能なテーマ:何について話せる会社なのかを明示する
  • 掲載・出演実績:第三者からどう扱われてきたかの記録
  • プレスリリースの履歴:時系列で見える会社の動き

この項目立ては、会社案内ページの中身とも重なります。会社情報ページ側を厚くする観点は、AI時代の会社案内に必要な19項目|E-E-A-Tとエンティティを高める実装ガイドで別途まとめています。メディアキットは、このうち「外部に取り上げてもらう」ことに特化して再編集したもの、と捉えると整理しやすいと思います。

なぜ「ダウンロードさせる形」だけだと、AI検索に届きにくいのか

ここからが本題です。一般的なメディアキットの作り方では、PDF・スライド・ZIPでの一括ダウンロードや、クラウドストレージでのファイル共有が、配布形式としてよく勧められています。記者に手渡す前提なら、これは合理的な選択です。

ただ、「AI検索という読み手」を加えると、話が変わってきます。

ここで誤解のないよう先に書いておくと、「PDFはAI検索でまったく使われない」というのは言い過ぎです。ChatGPTやClaude、Geminiに直接PDFを渡せば中身は解析されますし、Googleも、PDFを含む多くのファイル形式をインデックスの対象にしています(【調査データ】Google検索セントラル「Googleがインデックスできるファイル形式」)。つまりPDFも、AI検索が参照する母集団からはじめから外れているわけではありません。

問題は、読めるかどうかではなく、AI検索の引用元として「扱われやすいかどうか」という確率の話です。ここでは、いくつかの傾向が報告されています。

  • 【調査データ】AIクローラは、サーバーが最初に返すHTMLを読み取り、その多くはJavaScriptを実行しないとされています。本文を後から描画する作りや、ダウンロードの先に置かれた情報は、読み取りの対象から外れやすくなります。
  • 【調査データ】PDFは、いったん抽出(パース)する工程が必要です。この処理で見出し・表・読み順といった構造が崩れると、AI検索が扱う情報のまとまりが乱れ、回答の精度に影響しうることが指摘されています。
  • 【調査データ】AI検索は、ページ全体ではなく「引用できる一節」を抜き出して使う傾向があります。そのため、構造が整理されたページほど引用元として選ばれやすい、という報告があります。
  • 【仮説】これらを踏まえると、会社のファクトをZIPやクラウド上のファイルに閉じ込めるほど、AI検索から見たときの「拾いやすさ」は下がっていく可能性があります。

要点は、「PDFそのものが悪い」というより、ダウンロードさせる・HTMLの外にある・構造化されていない、という配布の形が、AI検索の引用という観点では不利に働きやすい、ということだと考えています。

では、どう公開するか|HTMLテキスト+構造化データで「ページに載せる」

ダウンロード用のファイルを否定する必要はありません。記者がロゴや高解像度画像を一括で取得したい場面はありますし、その用途ではZIPやPDFが適しています。

そのうえで、AI検索に自分から拾われに行くなら、会社のファクトはHTMLのテキストとしてページ上に載せ、構造化データ(JSON-LD)で機械が読み取れる形にしておく、という公開方法を基本に据えるのが現実的だと考えています。

具体的には、次のような組み合わせです。

  • 会社の基本情報を、ダウンロードではなくページ本文のテキストとして書く
  • Organization(組織)の構造化データで、社名・所在地・連絡先・公式SNSなどを明示する
  • Person(人物)の構造化データで、代表者の情報を紐づける
  • sameAs プロパティで、X・noteなど外部のプロフィールと関連づけ、同一の存在だと示す

イメージとしては、プレスページという1枚の器に、人が読む本文(HTML)と、機械が読み取る構造化データを重ねて持たせる形です。

  • プレスページ
    • 会社概要(HTMLで記述した本文)
    • 代表プロフィール(HTMLで記述した本文)
    • 実績(HTMLで記述した本文)
    • 問い合わせ先(HTMLで記述した本文)
    • Organization(JSON-LD)
    • Person(JSON-LD)
    • sameAs(SNS・外部プロフィール)

この構成にすると、人間の記者には読みやすく、AI検索が引用元として扱いやすい状態に近づくと考えています。なお、この図解をあえて画像にせず入れ子のテキストで示しているのは、画像化したテキストより、HTMLのテキストとして記述したほうがAI検索に扱われやすいと考えているからです。記事自体を、主張の手本にしているかたちです。

構造化データは、ページの内容が「誰の・何についての情報か」を、検索エンジンやAIが読み取りやすい形で示す仕組みです。会社を一つの「エンティティ(実体)」としてAIに認識してもらう考え方は、エンティティとは?AI検索に「あなたの会社」を覚えてもらう5つの方法で詳しく扱っています。AI検索が情報を取得してから引用に至るまでの段階的な流れは、AIO・GEO対策サービスのページでも整理しています。

ENVY DESIGNの現在地|実は、まだ散らばっている

正直に書くと、AIO(AI検索最適化)を専門に掲げている私自身、会社のファクトはまだきれいに集約できていません。情報の主軸は会社概要ページですが、代表プロフィール、実績、SNSと、置き場所が散らばっているのが現状です。だからこそ、本記事で書いた「器と中身を分けて、テキスト+構造化データで集約する」という作業を、これから自社で進めているところです。

関連して、一つ観察を共有します。ENVY DESIGNでは2026年6月にプレスリリースを初配信しました。その後、複数のメディアに転載が広がったのですが、転載のされ方は一様ではありませんでした。リファラーが渡らない形のものもあれば、渡る形のものもある、という具合です。

ここで効いてくるのは、リンクが生きているかどうか以上に、「社名が複数のドメインに、さまざまな文脈で出ること」だと考えています。被リンクと言及(サイテーション)で主役が入れ替わる構造は、サイテーションと被リンクの違い|SEOとAIOで主役は入れ替わるで整理しました。

なお、「会社情報ページを実際に見ているのは誰か」という観点は、AIは会社案内に直接送らない|では誰が会社情報ページを見ているのかで別途検証しています。あわせて読むと、メディアキットを「人間向けの体裁」だけで作ることの危うさが見えてくると思います。

まとめ|メディアキットは「引用の摩擦」を下げる装置

メディアキットを、記者とAI検索という2人の読み手のために作り直す。器(プレスページ)と中身(メディアキット)を分け、公開方法をダウンロード一辺倒からHTMLテキスト+構造化データへ寄せる。やっていることは、記者にとってもAI検索にとっても「引用するときの摩擦を下げる」という、ひとつの作業に集約されます。

そしてこの摩擦を下げるうえで効くのは、「できます」と言える状態を並べることより、「すでにやっています」と示せる事実を置くことだと考えています。この違いは「できます」は弱い、「やっています」が強い|AI時代の事業表現の作り方に書きました。

メディアキットは広報資料ではありますが、AI検索時代には「会社の情報公開ページ」としての役割も担うようになってきています。

自社のメディアキットや会社情報の公開方法を、AI検索に拾われる形に整え直したい方は、相談してみるからお気軽にどうぞ。今ある素材を見ながら、どこから手をつけるかを一緒に整理します。

よくある質問(FAQ)

メディアキットはPDFで配ってはいけませんか?

いいえ、PDFやZIPでの配布が悪いわけではありません。記者が画像やロゴを一括取得する用途には適しています。ただ、AI検索に引用されやすくしたい会社のファクトについては、ダウンロードの先に置くのではなく、HTMLのテキストと構造化データでページに載せることを基本にするのがよいと考えられます。

中小企業でもメディアキットは必要ですか?

会社の規模に関わらず、検討する価値はあると考えています。むしろ知名度がまだ高くない会社ほど、記者にもAI検索にも「見つけてもらう入口」を整えておく意味が大きい傾向があります。大がかりな制作物である必要はなく、テキストで会社のファクトをそろえるところから始められます。

プレスページとメディアキットは何が違いますか?

プレスページは「器」、メディアキットは「中身」にあたります。プレスページはメディア関係者の入口となるページ全体を指し、メディアキットはそこに置く会社のファクトと素材の束を指します。両者はほぼ同じ文脈で使われますが、分けて考えると設計がぶれにくくなります。

出典

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株式会社ENVY DESIGN

代表取締役/ディレクター/デザイナー

Web業界歴14年。これまでに 500件以上のWeb制作プロジェクトに携わり、企業サイト、採用サイト、ECサイトなど幅広い領域を手がけてきました。ディレクションだけでなく、デザイン・コーディングまで一貫して対応できるのが強みです。近年はAIO(AI Optimization)・GEO領域に注力し、ChatGPTやPerplexity、Google AI Overviewなど生成AI検索からの引用獲得を支援しています。

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