アクセスは横ばい、中身は逆転していた|検索クエリ2層分解の実測
「記事を増やしているのに、アクセスが増えない」。
そう感じている運営者は少なくないと思います。ENVY DESIGNも、2026年4月から8月にかけての5ヶ月がまさにその状態でした。コンテンツを継続的に追加し、検索結果への表示回数は明確に伸びた。それなのにクリックはほとんど増えていない。
先にお伝えします。この「何も起きていないように見える状態」は、実際に何も起きていなかったのではなく、正反対の動きが打ち消し合っていた結果でした。検索クエリを2つの層に分けて集計し直したところ、片方のクリックは約半分になり、もう片方は約3.2倍になっていました。7月には両者の構成比が逆転しています。
このページでは、その分解手順と実測値を公開します。あわせて、私たちが途中で3回読み違えた過程も、そのまま書きます。同じ「横ばい」に見えている方が、自分のサイトで確認できるところまで書きます。
このページでわかること
- クリックを主軸に置いた理由と、Search Consoleの既知の記録障害
- 検索クエリを技術系と非技術系の2層に分けた場合の、正反対の推移
- 個別クエリでは要因を特定できなかった理由
- 平均掲載順位の悪化が、必ずしも後退とは限らない理由
- 自分のサイトで同じ分解を行う4つの手順
平均値は、性質の違う層を合算して打ち消し合う
まず、サイト全体で見た数字です。
【調査データ】全体の月次推移(表示回数は2026年5月を100とした指数、いずれも1日あたり平均ベース)
| 月 | 表示回数指数 | CTR | 平均掲載順位 |
|---|---|---|---|
| 5月 | 100 | 2.32% | 13.23位 |
| 6月 | 125 | 2.18% | 12.52位 |
| 7月 | 134 | 2.22% | 13.53位 |
| 8月 | 136 | 1.80% | 15.79位 |
表示回数は3割以上増えました。一方でCTR(クリック率)は2.32%から1.80%へ、平均掲載順位は13.23位から15.79位へ後退しています。
この3つの数字だけを見ると、「記事は増えたが質は落ちた」という結論になりそうです。私たちも最初はそう読みました。
ただ、サイト全体のCTRは、性質のまったく違うページの成績を1つに平均した数字です。単価の高い商品と安い商品の売上を足して平均単価を出しているようなもので、構成比が変われば、それぞれの成績が変わっていなくても平均は動きます。
そこで、検索クエリを2つの層に分けました。
クリックを主軸に置いた理由
分解の話に入る前に、この記事がクリック数を中心に据えている理由を書いておきます。
Googleは、2025年5月13日から2026年4月27日までの期間、Search Consoleが表示回数を正確に記録できない障害があったことを公表しています。影響を受けたのは表示回数と、そこから計算されるCTR・平均掲載順位で、クリック数は影響を受けていません。
つまり、2026年4月のデータは30日のうち27日が障害期間に含まれます。表示回数・CTR・平均掲載順位について、4月を基準月として扱うことはできません。
そのため本記事では、次のように扱っています。
- クリック数:障害の影響を受けないため、4月を基準とした全期間の比較に使用
- 表示回数・CTR・平均掲載順位:障害の終了後で最初の完全な月である5月を基準とし、4月の値は掲載していません
分解の結論はクリック数の推移から導いており、障害の影響を受けない部分で成立しています。表示回数という指標そのものの読み方については、Search Consoleで表示回数だけ増える理由でも整理しています。
検索クエリを2層に分けたら、正反対の動きが同時に起きていました
分類の方法と調査条件
ENVY DESIGNのサイトには、大きく2種類の記事があります。1つは開発者向けの技術記事(プラグインの設定手順、フォントの処理方法など)。もう1つは制作を検討している企業向けの記事(費用、選び方、AI検索対策など)です。
分類は機械的に行いました。クエリに acf / cf7 / form / サブセット / subset / font / フォント / gsap / chrome / wordpress のいずれかを含むものを技術系、それ以外を非技術系としています。
【調査条件】
- 対象プロパティ:envydesign.jp(Search Console)
- 期間:2026年4月1日〜8月26日
- 8月はデータが取得できた最終の完全な日(8月26日)までを対象とし、月途中のため26日間として1日あたり平均で比較しています。他の月もすべて1日あたり平均に換算しています
- 検索タイプ・国・デバイスの絞り込みなし
- 日付は太平洋時間基準、データ取得日は2026年8月29日
- 集計対象はSearch Consoleがクエリを開示している範囲のみで、匿名化されたクエリは含みません
- 「form」には問い合わせフォーム制作など商業寄りのクエリが混じる可能性があり、技術系をやや多めに取っています
技術系:クリックはほぼ半分に、CTRも低下
【調査データ】技術系クエリの推移(クリックは2026年4月を100、表示回数は5月を100とした指数)
| 月 | クリック指数 | 表示回数指数 | CTR |
|---|---|---|---|
| 4月 | 100 | ー | ー |
| 5月 | 64 | 100 | 4.80% |
| 6月 | 76 | 111 | 5.11% |
| 7月 | 58 | 111 | 3.92% |
| 8月 | 51 | 97 | 3.96% |
クリックはほぼ半分になりました。障害の影響を受けない5月と8月で比べると、表示回数はほとんど変わっていないのに(100から97へ)、クリックは2割減っています。CTRが4.80%から3.96%へ下がった分です。
つまり技術系の減少は、検索結果に出る機会が減ったからではなく、出ているのにクリックされなくなったことが主因と考えられます。同様の傾向は技術記事の検索流入が4割減った実測データでも観測していました。
非技術系:クリックは約3.2倍、CTRは6月以降0.5%前後で横ばい
【調査データ】非技術系クエリの推移(クリックは2026年4月を100、表示回数は5月を100とした指数)
| 月 | クリック指数 | 表示回数指数 | CTR |
|---|---|---|---|
| 4月 | 100 | ー | ー |
| 5月 | 115 | 100 | 0.30% |
| 6月 | 231 | 118 | 0.51% |
| 7月 | 307 | 158 | 0.51% |
| 8月 | 323 | 173 | 0.49% |
こちらは正反対です。クリックは約3.2倍になりました。
CTRは5月の0.30%から6月に0.51%まで上がり、6月以降は0.5%前後で横ばいです。クリック増の内訳は、6月のCTR改善と、その後の表示回数の増加(100から173へ)の両方によるものと考えられます。
同じサイト、同じ書き手、同じ5ヶ月です。片方はCTRが下がり続け、もう片方は上がってから横ばいを保っています。
7月に構成比が逆転しました
【調査データ】クエリが開示されている範囲のクリックに占める非技術系の比率
| 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 |
|---|---|---|---|---|
| 20.4% | 31.3% | 43.6% | 57.4% | 61.5% |
単調に増えています。4月時点では技術系が8割を占めていたクリックが、8月には6割以上が非技術系に置き換わりました。
全体のクリック数がほとんど変わっていないのは、この入れ替わりがほぼ同量で起きたためです。合計だけを見ていると、この入れ替わりは一切見えません。
個別クエリでは、要因を特定できませんでした
技術系のCTR低下について、個別クエリまで降りて原因を見ようとしました。結論から書くと、特定できませんでした。
【調査データ】技術系の主要クエリ(障害終了後の5月と8月の比較)
| クエリ | 5月順位 | 5月CTR | 5月表示 | 8月順位 | 8月CTR | 8月表示 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| フォント サブセット化 | 1.19位 | 34.38% | 32 | 1.19位 | 30.77% | 26 |
| acf blocks | 1.16位 | 58.62% | 58 | 2.76位 | 23.68% | 38 |
| contact form 7 multi-step forms 有料版 | 1.84位 | 28.00% | 25 | 2.30位 | 18.92% | 37 |
acf blocks は順位が1.16位から2.76位へ落ちています。CTRの低下は順位の低下で説明がつきます。
フォント サブセット化 は順位が1.19位のまま変わらず、CTRは34.38%から30.77%へ3.6ポイント下がりました。順位で説明できない低下ですが、表示回数が月あたり30前後しかありません。この母数で「順位以外の要因が働いた」と結論づけることはできません。数件のクリックの増減で数値が大きく動く規模です。
正直に書くと、当初は4月と8月を比較して「順位が上がったのにCTRが半減した」と読んでいました。ですが4月の表示回数と順位は前述の障害期間に含まれており、比較の基準として使えません。障害終了後の5月に置き換えたところ、この読みは成立しなくなりました。
【仮説】層のレベルでは、技術系のCTRが5月から8月にかけて4.80%から3.96%へ低下しており、これは月あたり2,000前後の表示回数に基づく数字です。有力な要因の1つとして考えられるのが、生成AIによる回答表示の広がりです。手順を尋ねるクエリはAIが直接回答を提示しやすく、リンクをたどる必要が薄い種類の問いだからです。ゼロクリック検索が進む領域とも言えます。ただしSERP構成の変化、検索意図の変化、端末構成の変化など他の要因もあり、単一の原因に帰属することはできません。
2026年6月3日から、Search Consoleでは一部のサイトを対象に、AI OverviewsやAI Modeでの表示回数を確認できる生成AIパフォーマンスレポートの提供が始まっています。ただし現時点のレポートには検索クエリ別の内訳もクリック数も含まれていないため、特定の検索でAIによる回答がCTRに影響したかを直接確認することはできません。
個別クエリで要因を特定できないからこそ、層でまとめて見る必要があると考えています。
平均掲載順位の悪化が、必ずしも後退とは限りません
もう1つ、読み違えやすい数字があります。サイト全体の平均掲載順位が13.23位から15.79位へ後退した点です。
これは一見、順位が下がったように読めます。ただし技術系は表示回数の1割未満しかないため、この後退はほぼ非技術系の動きです。そして非技術系のCTRは、順位が2.5位分下がっているにもかかわらず0.5%前後を維持しています。
【仮説】新しい記事が下位の順位で継続的に追加されると、平均掲載順位は自動的に下がります。母集団に低い順位のページが増えるためで、既存記事が下落したことを意味しません。同一順位あたりのクリック効率はむしろ維持されている、と読むほうが実態に近いと考えられます。
記事を増やしている期間の平均掲載順位は、そのまま成績として読まないほうが安全です。
ENVY観察:私たちが3回読み違えたこと
ここからはENVY DESIGN1サイトの観察であり、母数の少ない一例です。他のサイトで同じことが起きるとは限りません。
正直に書くと、この5ヶ月の評価を3回書き直しています。
1回目は「進歩がなかった5ヶ月」でした。表示回数は伸びたがクリックは横ばい、CTRも平均掲載順位も悪化している。数字だけ見れば、そう読むのが自然です。
読み方が変わったのは、クリック減の内訳を確認したときでした。減っていたのはCTR4〜6%台の技術系で、これは開発者や同業者が読む記事です。相談や依頼にはほとんど繋がりません。増えていたのはCTR0.5%前後の非技術系で、制作会社の選び方や費用、AI検索対策など、技術記事よりも制作検討に近いクエリを多く含む層です。
つまり、問い合わせに繋がりにくい高CTR層が抜け、繋がりやすい低CTR層が入ってきていました。合計のクリック数が変わらなくても、中身の性質は変わっています。同じ期間に、問い合わせ完了画面への到達は約1.8倍になりました。
2回目の読み違えは、8月の扱いです。データ取得日が8月29日だったため、8月を29日間として日割りしていました。実際にはSearch Consoleのデータは8月26日までしか揃っておらず、26日で割り直すと8月は減速どころか、非技術系のクリックも表示回数も5ヶ月で最も高い水準でした。締め日を確認せずに割り算をすると、伸びている月を減速と読み違えます。
3回目は、個別クエリのCTRです。4月と8月を比較して「順位が上がったのにCTRが半減した」と読みましたが、4月は前述の記録障害の期間に含まれており、基準として使えませんでした。障害終了後の5月に置き換えると、順位も変わっておらず、CTRの低下幅も3.6ポイントに縮みます。データの前提を確認せずに、都合のいい発見を拾っていました。
もう1つ、この分解で見つかった問題があります。全体のセッション数だけを見ていた時期、私たちは「アクセスは増えている」と認識していました。国別に分けたところ、増加分の大半は平均滞在1秒未満の海外からのアクセスで、日本からの実ユーザーは横ばいでした。合算された数字は、増えたようにも減ったようにも見せてしまいます。
平均を見ている限り、何も起きていないように見える。そして分け方を間違えると、起きていないことが見えてしまう。これがこの5ヶ月で得た学びです。
自分のサイトで同じ分解をする4つの手順
特別なツールは必要ありません。Search Consoleの検索パフォーマンスレポートだけで確認できます。
- データの締め日を確認する。Search Consoleのデータには反映の遅れがあり、直近数日分が未反映のことがあります。月の途中で区切る場合は、揃っている最終日までを対象にして、その日数で割ります。
- 月ごとに区切り、1日あたり平均で比較する。期間を長く取ると変化が平均されて見えなくなります。日数の違う月を合計のまま比べないでください。
- 検索クエリを2層以上に分ける。クエリフィルタで、片方の層に特徴的な語(技術用語、製品名など)を含む場合と含まない場合に分けます。分類の粒度は完璧でなくて構いません。層ごとに傾向が違うことが見えれば十分です。
- 層ごとに、まずクリック数で並べる。表示回数とCTRは記録障害や仕様変更の影響を受けやすい指標です。方向を判断する軸はクリックに置き、CTRと順位は理由を探すための補助として使うほうが安全だと考えられます。
分け方に迷う場合は、「その記事を読んだ人が、自社に問い合わせる可能性があるか」を基準にすると実務的です。
よくある質問
サイト全体のCTRが下がっていたら、まず何を疑うべきですか?
記事の質やタイトルを疑う前に、母集団の構成が変わっていないかを確認することをおすすめします。CTRの高い層のページが減り、CTRの低い層のページが増えただけで、個々の成績が変わっていなくても平均は下がります。構成比を確認してから個別の改善に進むほうが、手戻りが少ないと考えられます。
Search Consoleの過去データはそのまま比較できますか?
期間によっては注意が必要です。Googleは2025年5月13日から2026年4月27日まで、表示回数を正確に記録できない障害があったと公表しています。この期間の表示回数・CTR・平均掲載順位は、それ以降のデータとそのまま比較できません。クリック数は影響を受けていないため、期間をまたぐ比較ではクリックを軸にするほうが安全だと考えられます。
平均掲載順位が下がったら、SEOが失敗したということですか?
記事を継続的に追加している期間は、必ずしもそうとは限りません。新しいページは下位の順位から始まることが多く、母集団に加わるだけで平均は下がります。既存記事の順位が実際に下がったかどうかは、記事単位またはクエリ単位で確認する必要があります。
順位が変わっていないのにCTRが下がるのは、なぜ起きるのですか?
検索結果ページの構成が変わった可能性が考えられます。生成AIによる回答、強調スニペット、動画枠などが上部を占めると、順位が同じでもクリックされにくくなります。ただし個別クエリの表示回数が少ない場合、数件の増減でCTRは大きく動きます。要因を検討する前に、その数字が判断に足る母数かどうかを確認することをおすすめします。
技術記事はもう書く意味がないのでしょうか?
目的によると考えられます。相談や依頼に直結させたいのであれば、投資効率は下がっている可能性があります。一方で技術記事は書き手の実力を示す材料になり、既存の取引先や採用候補者が読む場面もあります。流入数だけを基準に判断しないほうがよいと考えられます。
何層に分ければいいですか?
まずは2層から始めることをおすすめします。層を細かくするほど1層あたりの母数が減り、月ごとの変動が大きく見えてしまいます。今回の実測でも、個別クエリまで降りると母数が足りず、要因を特定できませんでした。2層で差が出た場合に、その層をさらに分けていく順序が扱いやすいと考えられます。
まとめ|平均が動かないときこそ、分解する
- 検索クエリを2層に分けると、技術系のクリックはほぼ半分に、非技術系は約3.2倍になっていた
- 7月に構成比が逆転し、8月時点でクリックの6割以上が非技術系
- 技術系は表示回数がほぼ変わらないままCTRが4.80%から3.96%へ低下しており、出ているのにクリックされなくなったと考えられる
- 非技術系はCTRが6月以降0.5%前後で横ばいのまま、表示回数の増加でクリックが伸びた
- 個別クエリまで降りると母数が足りず、要因は特定できなかった
- 記事を追加している期間の平均掲載順位は、そのまま成績として読まない
合計値が動かないとき、何も起きていないとは限りません。むしろ、逆方向の変化が同じ量だけ起きている可能性があります。
AI検索の広がりによって、クエリの性質ごとにクリックのされ方が変わりつつあります。この変化は平均値には現れにくく、分解して初めて見えるものだと考えられます。数字が動かないときこそ、分け方と、その数字の前提を疑ってみてください。分解の設計から伴走するAIO・GEO対策も行っています。
出典
- Google Search Console ヘルプ「Search Console のデータの異常」
- Google 検索セントラル「Introducing Search generative AI performance reports in Search Console」
- Google Search Console ヘルプ「検索パフォーマンス レポート」