テンプレート制作の落とし穴|改修できず110万円かけて作り直した話
ホームページを安く作りたい。その気持ちはよく分かります。ただ、安く作ったサイトが、結果的に高くついてしまうことがあります。
実際にあった話です。あるサイトはテンプレートで約30万円で作られていました。後からサービス追加に伴う改修を依頼したところ、制作した会社では対応できず、別の制作会社にも断られました。最終的にオリジナルで作り直すことになり、追加で約80万円。最初からオリジナルで作っていれば不要だったコストが乗り、合計で約110万円かかりました。
この記事は、テンプレートとオリジナルの一般的な比較ではなく、「なぜテンプレートは安く作れるのに、後から直せないのか」という、発注側からは見えにくい部分を掘り下げます。
テンプレートは「作る」のは簡単、でも「直す」のは難しい
制作会社の人間なら、ほぼ全員が知っていることがあります。テンプレートは作るのは簡単ですが、直すのは難しい、という事実です。一方で、発注する側はこのことをほとんど知りません。ここに、最初の30万円が最終的に110万円になる原因があります。
なぜテンプレートは直せないのか。理由は、テンプレートという仕組みそのものの作られ方にあります。
理由①:テンプレートは「そのまま使う」前提で作られている
市販のテンプレートは、購入した人がテキストと画像を当て込むだけで完成するように設計されています。つまり「そのまま使う」ことが前提です。
裏を返すと、第三者が後から大きく改変したり、別の制作会社が引き継いで手を入れたりすることは、最初から想定されていません。完成形に当て込む設計であって、構造を作り替える設計ではないのです。だから「お知らせを足す」程度は問題なくても、「レイアウトを変える」「機能を追加する」となると、途端に難しくなります。
理由②:作った会社しか構造が分からず、改修工数が読めない
これが、改修できない原因の大半を占めます。
テンプレートの内部構造は、それを作った人の都合で組まれています。どこをどう触ると、どこに影響が出るのか。それが外部の制作会社には見えません。市販テンプレートはページビルダーやテーマ独自の仕組みに依存していることが多く、表示は同じでも中身の組み方は制作者ごとにバラバラです。
そのため、「ここだけ変えてほしい」という一見シンプルな依頼でも、引き継いだ側は他人が組んだ構造を一から解析しないと安全に触れません。1箇所を変えると別の場所が崩れる、という連鎖も起きやすい。結果として、どれだけ工数がかかるか事前に読めない=見積もりが立てにくいという状態になります。
制作会社が改修を断るのは、意地悪でも手抜きでもありません。「他人が作ったテンプレートを、責任を持って安全に直す」ことのコストとリスクが、新規制作に近い水準まで膨らむからです。引き受けても割に合わない、と判断されるのはこのためです。
なお、まれにライセンス上の制約で、そもそも改変が禁止されているテンプレートもあります。ただし実務で改修が止まる原因の大半は、上記①②の「構造が複雑で、作った会社しか分からず、工数が読めない」ことの方です。
結果:改修費が新規制作に近づき、作り直した方が安くなる
①②が重なると、改修の難易度とコストは跳ね上がります。他人の組んだ構造を解析する工数は、ゼロから作るのと変わらない水準に近づいていきます。
私たち自身も、他社が制作したテンプレートサイトの改修相談を受けた際に、「直すより作り直した方が安い」と判断することがあります。テンプレートを否定したいのではなく、解析と改修にかかるコストを見積もると、現実的にそうなるケースがあるということです。
冒頭の「30万円→改修不可→80万円で作り直し→合計110万円」も、特別な失敗ではありません。テンプレートの仕組みを考えれば、起こるべくして起こったことだと言えます。
それでもテンプレートが有効なケース
ここまでテンプレートのリスクを書いてきましたが、テンプレートが合理的な選択になるケースもあります。
ENVY DESIGNでも、500件以上の制作実績の中で、テンプレートを使った案件は過去2件のみでした。いずれも「低予算で、とにかく存在を示せる最低限のサイトが欲しい」というご要望でした。サービス開始のタイミングで、まず存在証明としてのサイトが要る、というケースです。
こうした「存在を示す」段階のサイトであれば、テンプレートは便利で合理的です。判断の分かれ目は、今どう使うかではなく、1〜2年後にどう使いたいかです。集客や問い合わせ獲得のフェーズに入る見込みがあるなら、最初からオリジナルを選ぶ方が、結果的にコストを抑えられます。
補足:よくある2つの誤解
テンプレートの話と合わせて、発注前に解いておきたい誤解が2つあります。
「WordPress=テンプレート」ではない
WordPressはあくまで更新システム(CMS)です。その上にテンプレートを載せることも、フルオリジナルのデザインを載せることもできます。「WordPressだからテンプレート」ではありません。WordPressでオリジナルデザインのサイトは普通に作れます。WordPress自体の仕組みや特徴はWordPress公式サイトでも確認できます。
「WordPressなら何でも自分で更新できる」わけではない
WordPressで自分で更新できるのは、CMS化された箇所だけです。お知らせやブログは更新できても、トップページのデザインやサービスページのレイアウトは、CMS化されていなければ自分では変更できません。「どの部分を自分で更新したいか」を制作前に伝えておくことが大切です。カスタムフィールドを使えば、更新が必要な箇所を分かりやすい入力画面として設計できます。
3つの制作方法と、選び方の整理
最後に、制作方法を整理しておきます。
| テンプレート活用 | WordPress+オリジナル | フルスクラッチ(CMS不使用) | |
|---|---|---|---|
| デザイン | テンプレートのレイアウトに沿う | ゼロからデザイン | ゼロからデザイン |
| 更新性 | テンプレートの機能範囲内 | 必要な箇所を自由に更新可能 | 自分で更新できない |
| 改修・拡張 | 制限が多い・他社が触りにくい | 柔軟に対応可能 | 都度コーディングが必要 |
| 費用の目安 | 10万〜30万円 | 50万〜150万円 | 50万〜150万円 |
| 制作期間 | 2週間〜1ヶ月 | 2〜6ヶ月 | 2〜6ヶ月 |
選び方の目安は次の通りです。
| こんな場合 | 向いている方法 |
|---|---|
| とにかく早く・安く、存在を示したい | テンプレート活用 |
| 名刺代わりで、更新も拡張も予定がない | テンプレート活用 |
| 集客・問い合わせ獲得が目的 | オリジナルデザイン |
| 今後サービスやページが増える可能性がある | オリジナルデザイン |
| 競合と差別化したい | オリジナルデザイン |
| ブログやお知らせを自分で更新したい | オリジナルデザイン+WordPress |
費用の差は3〜5倍ありますが、初期費用だけでなく、将来の改修コストまで含めて判断するのがポイントです。集客や信頼につながるサイトにするうえで、独自性のあるコンテンツやデザインが重要であることは、Google「SEOスターターガイド」でも触れられています。見積もりの比較については見積書の見方と比較ポイントもご覧ください。
まとめ
- テンプレートは「そのまま使う」前提で作られており、第三者が後から改修することを想定していない
- だから他社は改修を断りやすく、引き受けても解析工数で費用が跳ね上がる(作った会社しか構造が分からず、工数が読めない)。まれにライセンス上いじれないケースもある
- 結果として、改修費が新規制作に近づき、作り直した方が安くなることがある(30万円→合計110万円の実例)
- 「WordPress=テンプレート」「WordPressなら何でも更新できる」は、いずれも誤解
- テンプレートが向くのは「存在証明」段階のサイト。集客・拡張を見据えるならオリジナルが有利
- 判断は「今どう使うか」ではなく「1〜2年後にどう使いたいか」で
「うちの場合はどちらが合っているか」を相談したい方は、お問い合わせください。制作者が直接ヒアリングし、最適な方法をご提案します。具体的な予定がない段階でのご相談も承っています。テンプレートを使うべきかどうかの判断はホームページ制作にテンプレートを使うべきか、他社で作ったサイトの改修は他社制作サイトの修正・更新対応もあわせてご覧ください。
よくある質問
テンプレートで作ったサイトをオリジナルに作り替えることはできますか?
可能です。ただし、テンプレートのデータをそのまま流用できるケースは少なく、デザイン・コーディングをゼロから作り直すことになる場合がほとんどです。コンテンツ(テキスト・画像)は流用できます。
他社で作ったテンプレートサイトの改修は依頼できますか?
対応可能な場合もありますが、テンプレートの種類や状態によっては、改修よりオリジナルで作り直した方が費用対効果が高いことがあります。改変が禁止されているテンプレートもあるため、まずは現状を確認し、最適な方法をご提案します。
WordPressを使わない制作(フルスクラッチ)を選ぶメリットはありますか?
更新が不要なサイトであれば、CMSを入れない分だけ費用を抑えられ、表示速度の面でも有利になることがあります。ただし、後からブログやお知らせを追加したくなった場合はWordPressの導入が必要になるため、将来の運用方針を踏まえて判断してください。
オリジナル制作を含む具体的な費用感は、ホームページ制作の料金・費用のページをご覧ください。