ホームページ制作の契約書の見方|揉めやすい4条項と確認リスト
制作会社から契約書が届いた。読んではみたものの、どこが重要で、どこを確認すればよいのかが分からない。とりあえず押印して進めていいのか、と不安になる方もいると思います。
先にお伝えします。
ホームページ制作の契約書で後から問題になりやすいのは、書かれていないことと、書いてあっても解釈が曖昧なことです。
特に確認したいのが、
- 著作権・成果物の利用範囲
- 納期が遅れたときの扱い
- 修正・仕様変更の範囲
- 支払いと途中終了時の精算
の4つです。
ここが曖昧なまま進むと、公開後や解約時に「そこまで含まれていると思っていた」「そんな話は聞いていない」というズレが起こります。
この記事では、ホームページ制作の契約書で見るべき条項を、制作会社の側から整理します。
ENVY DESIGNが契約段階で実際に確認を受けることや、契約書を交わさずに制作を進めて困った自社の失敗談も、一制作会社の実務上の経験として紹介します。
この記事でわかること
- ホームページ制作の契約書で確認したい4つの条項
- 業務委託契約書に含まれることが多い条項と確認ポイント
- 著作権だけでなく、元データやソースコードについて確認する理由
- 制作会社に契約前に確認しておくとよい質問
- 契約書が制作会社側から出てこない場合の対処
契約書のトラブルは「書いていないこと」と「曖昧なこと」から起きます
ホームページ制作では、「業務委託契約書」「Webサイト制作契約書」「制作請負契約書」など、さまざまな名称の契約書が使われます。
ここで注意したいのは、契約書のタイトルだけでは、契約の法的な性質は決まらないということです。
成果物を完成させることを約束する業務は「請負」として扱われることがあります。一方、調査・コンサルティング・運用支援など、一定の業務を遂行すること自体を目的とするものは「準委任」として整理されることがあります。
一つのホームページ制作案件の中でも、
- サイト制作
- 戦略設計
- SEO支援
- 公開後の保守・運用
で契約上の扱いが異なる場合があります。
IPA(情報処理推進機構)の「情報システム・モデル取引・契約書」でも、請負と準委任を分け、それぞれの責任や報酬の考え方を整理しています。
そのため、「業務委託契約書だからこうなる」と名称だけで判断するのではなく、実際に何を約束している契約なのかを見ることが重要です。
そして、契約書を確認するときに見るべきなのは、通常どおり制作が完了した場合だけではありません。
たとえば、
- 公開後に別の制作会社へ変更したい
- 制作会社側の事情で公開が遅れた
- 発注側の原稿提出が予定より遅れた
- デザイン決定後に大きな変更をしたくなった
- 制作途中でプロジェクトを中止した
- 公開後に不具合が見つかった
といった、予定どおり進まなかったときにどうなるかまで確認しておく必要があります。
IPAが公開しているモデル契約は情報システム開発向けですが、発注者と受注者の役割、成果物、検収、変更、中途終了などを契約前に明確にするという考え方は、ホームページ制作でも参考になります。
後から揉めやすい4つの条項
契約書を受け取ったら、まず次の4つを確認してみてください。
1. 著作権の帰属と、実際に何を自由に使えるのか
ホームページのデザイン、写真、文章、イラスト、プログラムなど、創作性のある制作物には著作権が発生する場合があります。
著作権は、発注側がお金を支払っただけで自動的に発注側へ移るわけではありません。
原則として実際に著作物を創作した人が著作者となります。制作会社の従業員が一定の条件を満たして職務上制作したものについては、制作会社が著作者となる場合もあります。
そのため、契約書ではまず、
- 著作権を発注側へ譲渡するのか
- 制作会社側に残し、発注側へ利用を許諾するのか
を確認します。
第27条・第28条の権利まで譲渡されるか
著作権法では、著作権の譲渡契約で第27条・第28条に規定する権利が譲渡の対象として特に明記されていない場合、これらの権利は譲渡した側に留保されたものと推定されます。
そのため、
「著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む」
といった記載があるかは、一つの確認ポイントです。
特に、
- 公開後にデザインを変更する
- 他の媒体へ展開する
- 別の制作会社が改修する
可能性がある場合は、利用できる範囲を確認しておくことをおすすめします。
著作者人格権も別に確認する
もう一つ見落としやすいのが、著作者人格権です。
著作者人格権は著作権とは別の権利で、譲渡することができません。
そのため、著作権を発注側へ譲渡する契約でも、
- 制作者が著作者人格権を行使しない旨があるか
- どの範囲で改変できるのか
が別途定められていることがあります。
「著作権がある」ことと「元データをもらえる」ことは別です
ここは実務上、かなり重要です。
著作権が発注側へ移る契約でも、
- Figmaデータ
- Photoshop・Illustratorデータ
- 未加工の写真データ
- ソースコード
- 使用していないデザイン案
まで当然に納品されるとは限りません。
著作権の帰属と、何を成果物として納品するかは別の話です。
将来、他社へ引き継ぐ可能性があるなら、
「公開後に別の制作会社へ引き継ぐ場合、どのデータを受け取れますか?」
と契約前に確認しておくと安心です。
第三者の素材は別に考える
制作会社が、
- ストックフォト
- Webフォント
- 有料フォント
- WordPressのテーマやプラグイン
- 外部のイラスト・動画素材
などを利用する場合、それらには第三者の権利やライセンスがあります。
そのため、
「第三者が権利を有する素材については譲渡対象から除く」
と書かれていること自体は、不自然ではありません。
重要なのは、
- 公開後もそのまま使えるのか
- 制作会社を変更しても使えるのか
- ライセンス料が継続して発生するのか
まで確認することです。
2. 納期が遅れた場合の扱い
契約書に「○月○日納品」と書かれていても、遅れたときの扱いまで書かれていない場合があります。
確認したいのは、
- 制作会社側の事情で遅れた場合
- 発注側の原稿・写真・確認が遅れた場合
- 双方に原因がある場合
- 災害など双方の責任ではない事情が発生した場合
です。
ホームページ制作では、制作会社だけで作業が完結するとは限りません。
たとえば、
- 制作会社がデザインを提出する
- 発注側が確認する
- 発注側が原稿を提出する
- 制作会社が修正する
というように、双方の作業が交互に発生します。
そのため、
「発注者による確認または素材提出が予定日を超えた場合は、協議のうえ納期を変更する」
など、発注側の遅れも含めたルールがある方が実務では判断しやすくなります。
特に展示会、採用開始、サービス開始など、公開日を動かせない事情がある場合は、単に「納期○月○日」と書くだけでなく、遅延時の扱いまで確認しておくことをおすすめします。
3. 修正の回数ではなく「どこからが仕様変更か」
「デザイン修正2回まで」
という契約でも、何を1回と数えるのかは会社によって異なります。
たとえば、
- 文字の修正
- 写真の差し替え
- 色の変更
- セクションの並び替え
- デザインの全面変更
- ページの追加
をすべて同じ「修正」として扱うとは限りません。
むしろ重要なのは、どこまでが当初料金に含まれる修正で、どこからが追加の仕様変更になるのかです。
この条件は契約書本体ではなく、
- 見積書
- 仕様書
- 提案書
- 発注書
などに書かれている場合もあります。
契約書に「別紙見積書に定める」と書かれている場合は、その別紙まで一緒に確認してください。
4. 支払条件と、途中で止まった場合の精算
着手金、中間金、残金の支払時期は書かれていても、制作途中で契約が終了した場合の扱いが分かりにくい契約書があります。
確認したいのは、
- 発注側の都合で中止した場合
- 制作会社側の事情で継続できなくなった場合
- 双方の合意で中止する場合
- すでに制作した成果物を使えるのか
- どこまでの費用を支払うのか
です。
たとえば、
「着手後のキャンセルは契約金額の100%」
なのか、
「完了した工程までを精算する」
のかでは、金額が大きく変わります。
ホームページ制作の途中でキャンセルした場合の費用については、ホームページ制作の途中でキャンセルした場合、費用はどうなりますか?でも解説しています。
ENVY DESIGNでは、契約書を交わさずに進めた案件で連絡が途絶えたことがあります
ここからは、ENVY DESIGNの実務上の経験です。
私たちは2012年の創業から500件以上のホームページ制作に関わってきました。以下は案件を集計した統計ではなく、制作会社として契約や見積もりを行ってきた中での観察です。
制作会社側の契約書と、発注側の契約書の両方があります
ENVY DESIGNのひな形を使う案件もあれば、法務部門のある企業などから契約書を提示される案件もあります。
発注側から提示された契約書について、内容を確認したうえで修正を相談することもあります。
たとえば、
- ホームページ制作の実態と合っていない検収条件
- 必要以上に広い成果物の権利譲渡
- 業務範囲に対して責任範囲が広すぎる条項
などです。
どちらが契約書を用意したかよりも、実際の制作内容に契約条件が合っているかの方が重要です。
著作権については実務上の質問を受けることがあります
契約段階で、
「公開後に自社で更新していいですか?」
「将来別の制作会社に変更できますか?」
「デザインデータももらえますか?」
といった質問を受けることがあります。
発注側が本当に知りたいのは、著作権法の条文そのものより、契約後に何ができるのかであることが多いと感じています。
そのため私たちも、契約書の文言だけでは分かりにくい部分については、実際の運用に置き換えて説明するようにしています。
契約書を交わさないまま制作し、連絡が取れなくなったことがあります
これは私たち自身の失敗です。
コロナ禍より前に受注した案件で、契約書を交わさないまま制作を進めていたところ、途中でクライアントと連絡が取れなくなったことがあります。
制作物は途中まで出来上がっていました。
ただ、
- どの時点までを請求するのか
- 途中の制作物をどう扱うのか
- いつ契約を終了したと判断するのか
について、明確な文書を残していませんでした。
法的に契約が存在しなかったという意味ではありませんが、双方が何に合意していたのかを確認する材料が不足していました。
この経験から、ENVY DESIGNでは規模の小さい案件でも、契約書、または発注内容と受注内容を確認できる文書を残すようにしています。
契約書は制作会社だけを守るものではありません。
発注側にとっても、
- 何を受け取れるのか
- いくら支払うのか
- いつ完成するのか
- 途中で終わった場合どうなるのか
- 公開後に何ができるのか
を確認する根拠になります。
契約書を確認するときのチェック項目
ホームページ制作の契約書に含まれることが多い項目と、確認したい点を整理します。
| 条項 | 確認したい点 |
|---|---|
| 業務の範囲 | 何を制作するのか。原稿・撮影・SEO・保守などは含まれるか |
| 契約の性質 | 成果物の完成を目的とするのか、業務の遂行を目的とするのか |
| 納期・スケジュール | 双方の遅延時にどう扱うか。公開日の変更方法 |
| 検収 | 何をもって完成とするか。検収期間とみなし検収の有無 |
| 報酬・支払条件 | 着手金・中間金・残金の時期。途中終了時の精算 |
| 著作権・知的財産権 | 譲渡か利用許諾か。第27条・第28条、第三者素材の扱い |
| 著作者人格権 | 不行使条項の有無と範囲 |
| 成果物・納品データ | Figma等の元データ、ソースコード、写真データが含まれるか |
| 修正・仕様変更 | 無償修正の範囲と、追加料金になる条件 |
| 契約不適合・公開後の修正 | 公開後に不具合があった場合の対応範囲と期間 |
| 秘密保持 | 双方が秘密情報を扱う場合の対象・期間・例外 |
| 再委託 | 外部パートナーへ委託できるか。その場合の責任 |
| 契約解除 | どのような場合に解除できるか。解除後の精算 |
| 損害賠償 | 賠償範囲、上限、上限が適用されない場合 |
| ドメイン・サーバー | 誰の名義で契約するか。将来の移管方法 |
| 外部サービス | フォント、写真、プラグイン等の契約者と継続費用 |
すべての契約書に同じ条項が必要という意味ではありません。
ただし、自社の案件に関係する項目が書かれていなければ、契約前に確認しておくと安心です。
制作会社には、法律用語ではなく実際の使い方で聞く
契約書の意味が分からないときは、法律用語だけで考え続けるよりも、実際に起こりそうな状況に置き換えて制作会社へ聞く方法があります。
たとえば、
- 「公開後、自社の担当者がページを追加・修正することは契約上問題ありませんか?」
- 「将来、別の制作会社に引き継ぐ場合、どのデータを渡してもらえますか?」
- 「Figmaなどのデザイン元データは納品物に含まれますか?」
- 「御社の事情で公開が遅れた場合、公開日や費用はどう扱われますか?」
- 「こちらの原稿提出が予定より遅れた場合、納期はどうなりますか?」
- 「デザイン決定後にレイアウトを変更した場合、追加費用になりますか?」
- 「制作途中で中止した場合、どこまでの費用を支払うことになりますか?」
といった聞き方です。
契約書の条文をそのまま理解することも大切ですが、「この条文だと、実際にはどうなるのか」まで確認すると、認識のずれを減らせます。
契約書が出てこない場合でも、合意内容を文書に残す
小規模な制作会社への依頼などでは、一般的な契約書を使わずに取引するケースもあります。
民法上、法令に特別な定めがある場合を除き、契約の成立に必ずしも書面が必要なわけではありません。
ただし、契約書を作らないことと、取引条件を文書に残さなくてよいことは別です。
特にフリーランスへ業務を委託する場合、フリーランス法の対象となる取引では、発注事業者が業務内容、期日、報酬額、支払期日などの取引条件を、書面またはメールなどの電磁的方法で明示する必要があります。口頭だけで済ませることはできません。
フリーランスへの発注に限らず、口頭や打ち合わせだけで進めると、後から双方の認識が違ったときに、何に合意したのかを確認しにくくなります。
少なくとも、
- 業務範囲
- 金額
- 納期
- 成果物
- 著作権・利用範囲
- 支払条件
- キャンセル時の扱い
程度は、契約書、発注書・受注書、メールなど、後から確認できる形で残しておくことをおすすめします。
発注書と受注書を使う場合も、書類の名称だけで判断するのではなく、何について申し込み、何について承諾したのかが分かる内容になっているかを確認してください。
締結方法については、ホームページ制作の契約書は電子契約で締結できますか?でも解説しています。
なお、この記事はホームページ制作会社の実務経験をもとに、契約時の確認ポイントを整理したものです。個別の契約について法的判断を行うものではありません。
金額の大きい案件、権利関係が複雑な案件、契約条項の解釈に迷う場合は、弁護士などの専門家へ確認してください。
よくある質問
契約書は発注側と制作会社、どちらが用意するものですか?
どちらでなければならないという決まりはありません。
制作会社がひな形を用意する場合もあれば、発注側に法務部門がある企業などでは発注側の書式が使われる場合もあります。
重要なのは、どちらの書式を使うかではなく、実際の業務内容と契約条件が合っているかです。
「著作権を譲渡する」と書いてあれば、公開後は自由に使えますか?
その一文だけで、あらゆる利用が可能になるとは限りません。
著作権法第27条・第28条に規定する権利が譲渡対象として明記されているか、著作者人格権がどのように扱われているか、第三者素材のライセンスに制限がないかなども確認する必要があります。
また、著作権が譲渡されても、FigmaやPhotoshopなどの元データまで納品されるとは限りません。
権利の帰属と納品物の範囲を別々に確認してください。
契約書の修正をお願いしてもいいですか?
契約書は、提示された内容をそのまま受け入れなければならないものではありません。
分からない条項について質問したり、自社にとって重要な条件について修正を相談したりすることは可能です。
制作会社が修正を受け入れるかどうかは条項や案件によりますが、少なくとも、なぜその条件になっているのかを確認してから契約することをおすすめします。
契約書なしで進めても問題ありませんか?
契約は、法令に特別な定めがある場合を除き、必ずしも書面がなければ成立しないものではありません。
ただし書面がないと、後からトラブルになった場合に、
- 何を制作する約束だったのか
- 金額はいくらだったのか
- 著作権をどうする合意だったのか
- キャンセル時の扱いはどうだったのか
を証明しにくくなります。
契約書を使わない場合でも、発注書・受注書やメールなどで合意内容を残しておくことをおすすめします。
検収期間はどのくらいにすればいいですか?
案件規模や自社の確認体制によって異なります。
日数そのものより、
- 自社で必要な担当者が確認できる期間か
- 修正後の再確認をどう扱うか
- 期間内に連絡しなかった場合に「検収完了」とみなされるか
を確認してください。
特に「○日以内に異議がなければ検収完了とみなす」という条項がある場合は、自社で実際に確認できる日数かを見ることが重要です。
契約書に印紙は必要ですか?
契約書の内容や締結方法によって異なります。
紙で作成した契約書が印紙税法上の課税文書に該当する場合は、印紙税の対象になります。
一方、電子契約など電磁的記録として作成されたもの自体は、印紙税の課税対象となる「文書」には含まれません。
具体的な契約書が課税文書に該当するか分からない場合は、税理士や税務署などに確認してください。
契約書が読めない、という段階でもご相談いただけます
「契約書のどこを見ればよいか分からない」
「元データをもらえるのか分からない」
「公開後に他社へ変更できるのか確認したい」
という疑問は、契約前に解消しておくことが大切です。
ENVY DESIGNでは、制作会社としてどの条項をどう考えているのか、契約後に何ができるのかまで含めて説明しています。
分からない条項を、分からないままにせずご相談ください。
出典
- 情報システム・モデル取引・契約書|IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
- 著作権法|e-Gov 法令検索
- 著作権テキスト(著作権を学ぶ)|文化庁
- 民法|e-Gov 法令検索
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)|e-Gov 法令検索
- フリーランス・事業者間取引適正化等法 説明資料|公正取引委員会・中小企業庁
- No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断|国税庁